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写真の「チカラ」#01 大貝篤史 

約 4 分
M/大迫瑞季

人を好きになることの痛みに慣れた頃の思い出を描く

僕にとっての写真とは。
自分でもその意味はよく理解できていない。ただ、なぜ女性を撮ろう思ったのか、それは自分にとって女性とは「非常に興味のある存在」だったからだろう。高校生のときはとても寂しがり屋で、だれかと一緒にいたいという強い意思を持ち続けていた。だからこそ彼女に依存することは多かったし、その分いいことも悪いこともたくさんあった。女性は僕にとっては生きる上でとても貴重な経験をさせてくれたかけがえのない生き物なのだ。

女性はある年齢からとても変わっていく。変わりゆく様はとても美しく儚い。

そんな彼女たちのありのままの姿を写真で収めていくことが自分にとってのライフスタイルのようになっていく。その人の今をしっかりと記録するためには、クリアしないといけない問題も多かった。

ありのままの女性を撮りたい

撮影するときには、とにかくカメラという存在を忘れてほしい……。
そう思い続けていた。少しでも「自分自身をよく見せよう」と思われてしまうと、その瞬間作られた世界が広がり、撮りたい僕の世界が見えなくなる。普段どおり、おしゃべりをし、はしゃぐ。その結果、ピントが甘くなったり、ぶれてしまったり、構図がおかしくなることも多々ある。
しかし、それこそがもしかしたら僕の描きたい世界なのかもしれない。彼女たちに漂う空気感をそのまま切り抜き、そして一枚の写真に刻み込む。だからこそカメラなんて正直なんでもいいと思っている。けれど、だからこそどのカメラにしようかと嬉しい「悩み」がつきまとい、カメラを集めることが楽しく感じるようになった。カメラにもそれぞれ「個性」が存在する。長く付き合うからこそ、自分にとってのベストアイテムを探したい。まさに「女性」と付き合うのとさほど変わらないのかもしれない。たくさんカメラを持っている僕は「優柔不断」だ。女性からみると、いわゆる「だめな男」なのかもしれない(笑)。
僕のポートレート写真のテーマは「空間・時間」だ。作風を見てもらうとわかるのだが、自然と広角を使った写真が多くなる。レンズも明るい単焦点レンズをこよなく愛し、50㍉レンズに関しては数十本持っているほどだ。彼女のいる空間をまるまる持ち出したいし、そのときに流れている時間を表現したい。そうなるとどうしても周りの状況も取り込んだ写真が撮りたくなるのだ。それでやっと僕の写真は完成する。これからも素敵な女性を撮り続けていたい。 そう願わずにはいられない。写真は、、、必要なんだ。


大貝篤史(おおがい あつし)

大阪府生まれ、横浜育ち。東京学芸大学を卒業後、数々の出版社で編集業務を行うかたわら、誌面写真の撮影も行う。2011年からスナップシーンでのポートレート作品を撮りはじめる。
17年に朝日新聞出版を退社後、フリーディレクターとして活躍しながら、作品づくりも鋭意実施。現在は写真誌「アサヒカメラ」のディレクターとして業務を行っている。15年には個展「安倍萌生写真展」、17年、18年、19年と「育ち盛りの写真家写真展」に参加。それ以外にもポートレート写真展「HUMAN COMPLEX」を実施。orphotograph.comの編集長。http://35mm50mm.com