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写真の今がわかるWeb情報マガジン

写真の「チカラ」 #08 高屋 力

約3分

幼き頃の思い出をなぞる

僕が鉄道写真を撮るのは、幼少期の経験や思い出が影響している。昔から鉄道がとても好きで、よくローカル線を見ていた。窓越しに走る列車……、子どもの頃に見た景色を追い求めて写真に残す。僕の鉄道写真の中には、人と列車が溢れている。 子どもの頃から、「鉄道」という存在は特別だった。そこにはストーリー(物語)を感じる。列車を取り巻く環境には、いつも多くの人が関わっている。人がいれば、そこにはドラマが生まれる。それはある意味日常であり、非日常なセカイ。だからこそ鉄道写真は楽しいのだ。

鉄道写真と巡り合う

鉄道を撮るには最低限の知識が必要だ。ダイヤの読み方、車両自体の特性、かっこいい写真が撮れる撮影ポイントなどなど。その知識があれば、きっと素晴らしい瞬間に出会えるかもしれない。その近道として重要なのは「足で稼ぐ」ことだ。イメージしている写真が撮れるのかを何度も足を運び、自分のものにしていく。それでも思い通りにならないことのほうが多いが、諦めずに信じることも重要だ。
鉄道写真を撮るようになったのは、小学生の時。オリンパスのフィルムカメラ(ハーフ)でよく撮っていた。その後、高校生のときにバイトで貯めたお金で一眼レフカメラを購入。その時は、カメラマンに自分がなるなど思いも寄らなかった。そして卒業近くになって進路を決めないといけないときに、色々と学校から推薦してもらった仕事を見てもどれもピンとこなかった。自分の仕事がこのままでいいのか悩む日々。そのときに好きなカメラを仕事にできないかと思いたち、当時の中学卒業アルバムの後ろに書いてあった写真事務所に電話をした。そしてその写真事務所で色々と勉強させてもらい、今に至るのだ。好きな鉄道を撮りながらご飯が食べられる……。
僕にとっては、とても幸せな日々だ。だからこそ今の現状は僕にとってはとても辛い。早く撮影にいけるように世の中が落ち着いてくれることを祈りつつ、フィルムのデジタル化や事務所のメンテナンスをしている。「今」できることをきちんとすることも写真家として重要なことなのかもしれない。


高屋力  たかや・りき

1974年、京都生まれ。幼年期より鉄道に興味を持ち写真を始める。フォトスタジオで6年間勤務後、1998年「フォトオフィス高屋」を設立。営業写真、商業写真を中心に、ライフワークとして叙情的な鉄道風景を表現すべく全国を放浪中。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。日本鉄道写真作家協会(JRPS)会員。