orphotograph

写真の今がわかるWeb情報マガジン

写真の「チカラ」#03  福井麻衣子

約4分
M/Makito Uchida(light management) H&M/Yoko Kawaguchi ST/Waca Sato

写真との出合いは私にとっては必然だった

写真を始めたきっかけは、最初の職場の環境だった。当時の私は洋服屋で働いていた。そんな環境下だったからファッション誌や音楽雑誌などをよく読んでいたのだ。そこに載っている写真はとてもおしゃれで力強いものばかりで魅力的だった。
そんな私にとって憧れの写真を自分自身も撮ってみたいと思うのにそう時間はかからなかった。そして、フィルムカメラを買ったのが私の「写真」の始まりだ。
だから今でも雑誌などの紙媒体の仕事はとても楽しいし、やりがいを感じている。雑誌に自分の写真が掲載され、その後、読者からダイレクトに反応が返ってくる……。それは仕事で「写真を撮る」うえではとても重要で、モチベーションを維持するのにも非常に役立っている。
写真を「仕事」にしていると、厳しい環境や条件下で撮影することが多く、そんな環境をこなしていくうち、撮影のスキルはどんどん上がっていく。自分の中にはなかった表現、今まで出来なかった高度な撮影技法……。そういうものが現場で吸収できることが私にとってはどれも貴重な経験だ。

「写真」と「私」

写真との付き合い方で重要なのは「写真との距離感」だ。近づきすぎてもだめ、遠すぎてもだめ。その距離感を維持するためにも、時間が空いたときには必ず「作品撮り」を行っている。仕事としての写真から少し離れることで、創造したいというモチベーションを保っている。そして、自由に自己完結で写真を撮ることで、そのときに感じたものが仕事でも生きてくる。とてもいい流れだ。
だからこそ、撮影時にもっとも注意している点は、自分自身の「心」のコンディションと「イメージ」。私にとっては、まさに自分との闘いが写真そのものなのかもしれない。人は潜在的な根っこの部分が皆つながっていると思っている。写真は自分自身の根っこの部分が形になった成果物なのだ。そう思っているからこそ、その時、自分が興味を持ち作品にしようとした物事に対して、どのようにイメージし表現するか、という事に集中する。その結果、きっと伝えたいことが写真から湧き出てくるはず。だからこそ、「心」が自分にとって健全であるのはマストな条件なのだ。
一方、テクニカルな部分で大事にしているのは「光」だ。作品撮りのときにも自分が表現したい光があり、それをどのように魅せるかが、自分の表現につながる。私は、ベアバルブを使った光や逆に曇の日に感じるフラットで透明感のある光など相反するような光で撮るのが好きだ。ポートレート撮影では、いかに自分らしい光を見つけるかがポイントになる。それを導き出してくれるのは、経験と新しいことにチャレンジする強い心だ。

写真を撮るときに大事にしているのはそのものの持っている「キラリと光る瞬間を撮る」こと。2020年は男子写真のシリーズをより深化させたいと思っている。男子の「男性の中にある美しさや、やわらかな部分」を自分なりに表現していきたい。


福井麻衣子  ふくいまいこ

1983年生まれ。大阪府出身。東京都在住。写真家・内池秀人氏に師事、現在フリーランスフォトグラファー。「日々の小さな感動を糧に」きらりと光る瞬間や、その時の空気やにおいを写すことをテーマにポートレート撮影を中心にライフスタイル・旅や街歩き撮影で活躍。雑誌、広告を中心に、カメラ誌・書籍の執筆も多数。また、異業種とのコラボレーション企画も展開。ジャンルに固執することなく、柔軟に対応できる次世代写真家の一人。
HP→https://www.fukuimaiko.com
instagram→@caby_maiko(https://www.instagram.com/caby_maiko/)