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遊び心と本気度が同居する新製品シグマのfp L

約5分

fpでかゆいところで手が届かなかった部分に手が届いたfp L

 シグマから新しいミラーレスカメラ「fp L」が発表された。新製品プレゼンのYouTubeを拝見して思ったのは、すごい勢いで新しいカメラの形に対応しようとする姿勢だ。新型コロナウイルスの影響以前にカメラの販売数は右肩下がりだった。そんな状況の中、各社新しい需要などに対応するためにさまざまな試行錯誤のもと現在に至る。数あるカメラメーカーの中で、ここまでフレキシブルに対応できるシグマはきっと楽しんで作っているのだと確信が持てる。楽しそうにしているメーカーの製品には販売力が宿り、自然と売れるのだ。

 今回発表の「fp」に次ぐラインアップの追加として、「fp L」が発表された。ボディーサイズなどは「fp」と同等。重さはわずかだが重くなった。センサーサイズは約6100万画素とかなりの高画素化した印象。しかし、プレゼン時に山木社長から話があったように、ただ6100万画素という高画素にするのではなく、その高画素をどのように使い込んでいき、その恩恵を便利さに変えていくのか…。そういう部分に関してもユーザーにしっかり提案してくるところが「さすが」だと感じた。  さらに大きな進歩は、位相差AFの搭載と外付けEVF(ELECTRONIC VIEWFINDER EVF-11)の設定だろう。スチル撮影だけで考えると、コントラストAFのみでも我慢できるのだが、動画撮影において、スピード感がない合焦スピードは正直撮影していてイライラする原因だ。合わせたい部分になかなかピントが来ないことで、動画素材として使えないのは商業目的での使用では厳しい。ワンオペではなく、製作費をかけれる大掛かりな撮影なら「フォーカスフォロー」に徹することができる人を配置することができるが、小規模な動画撮影を余儀なくされている中小プロダクションではそのような恵まれた環境ではないケースが増えている。実機で試したわけではないので、現段階ではなんとも言えないが、「使える」AFになっているのであれば、ワンランク上の動画制作が可能となるだろう。fpでもすでにCinema RAWには対応しているし、ハイクオリティーな映像を撮影できるポテンシャルはあった。しかしどこか「クラウンを買ったけど、エアコンとオーディオが付いていない」というような印象をうけるカメラで、使うには少し「工夫」が必要だった。さらに筆者がfpを購入した瞬間から言い続けていた「EVFは必要でしょ!」という要望にもしっかりと応えてくれるは、純粋に素晴らしいと感じた。こういうユーザーの声をしっかりと拾い上げるあたりは、非常に好感が持てる。それだけで「I LOVE SIGMA」になるのだ。このEVF-11は0.5型かつ約368万画素の有機ELパネルを採用しているため視認性は良さそうだ。さらにチルト構造であることので、ウエスト位置にカメラを持って撮影するスタイルにもしっかりと対応できる。さらにこのEVF-11は無印のfpにもファームアップで対応予定であるとのことで、fpオーナーにとっても朗報だ。

SNS時代にまじめに対応している遊びごころ

 また面白い機能として、QRコードの中に撮影情報を取り込むことができる機能を追加した。このQRコードを作ることで、絞り値、シャッタースピード、ホワイトバランス、ISO値などをさまざまな情報を記録できる。その写真の撮影情報が知りたい場合には、このQRコードを読むことで簡単にわかるのだ。写真と一緒にこのQRコードをアップしておけば、知りたいと思っている人に簡単に教えることができるのは、まさにSNS時代に対応した面白い機能だ。そして、もう一つすごいのは、fp LでこのQRコードを読み込むことで、その設定値を自分のカメラにも反映でき、それを「カスタム」に振り分けることが可能になる。「この写真のように撮りたい」と思えば、同じものが簡単に撮れる時代が到来する。写真家が「パンドラの箱」である撮影情報を気軽に公開してくれるかどうかはまた別の話ではあるが…。他のメーカーではできていない部分を真っ先にアイデアで補完してくるあたりは、シグマのすごさだ。

引用:https://www.youtube.com/watch?v=JROqUE2mgEs&t=1631s

動画撮影シーンを強く意識した変更点

 動画とスチルでは使用している単位や表記が違う。そのあたりをしっかりと対応できるようにするために、それぞれ専用のUIを搭載。どちらの目的で使うのかによって変えることで、より直感的な操作ができる環境を提供してくれる。また、長時間の録画を想定し、ヒートシンクを搭載。しっかりと熱処理を行うことで熱暴走したり、強制終了になってしまうのを効果的に防ぐように設定されている。また、ディレクターズビューファインダーとしての使われ方まで想定している部分には脱帽だ。これから増えていくであろう動画コンテンツや動画作品の制作に活躍できるカメラだろう。fpを当時「フルアーマーガ●ダム」だと記事で表現したが、このfp Lは「サイコガ●ダム MarkⅡ」であるかのようなインパクトだ。シグマさんが貸してくれれば、ぜひ実写レビューを行いたい。(貸してくれなそーだが)

■文/大貝篤史



■シグマ fp L
https://www.sigma-global.com/jp/cameras/fpl/