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LUMIX S5II SHOOTING REPORT

約6分

Panasonicから発売されたLUMIX S5IIはLUMIX フルサイズミラーレスカメラの中核を担うカメラだ。LUMIX S5から大幅に体力アップし、外観こそ大きい変化はないが、スチルも動画もハイレベルで撮影できるモデルチェンジが施されている。 センサーは約2400万画素と大きな変化はないが、LUMIX初の像面位相差AFを搭載。従来の空間認識AF+コントラストAFの組み合わせに加、より正確かつ追従性のいいAFとなった。正直、従来のAFシステムでポートレート作品やインタービュなどの商業写真であれば、特に不満もなく使えていただが、従来のAFでは迷うシーンなどでは新システムの方はまったくといっていい動きをする。弱点を克服するための「像面位相差AF」というイメージだ。

Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art

Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art

画像エンジンも新エンジンを搭載。定評のあるLUMIX GH6系のエンジンをLUMIX S5IIにさらにチューニング。ダイナミックレンジがさらに広がり、階調感が豊かな色彩を描き出す。色の方向性は、ニュートラルよりやや記憶色に近いイメージで、よりビギナーでも扱いやすい色となっている。また高感度耐性も少し上がっているように感じる。夜間や暗所での撮影でも比較的ノイズを感じることが少ない。驚いたのは暗部の「ディテール」が維持されていることだ。ノイズリダクションが強いと、ディテールや階調感が薄れてしまうが、LUMIX S5IIに関しては他社のミラーレスカメラよりも圧倒的に描写がうまい。筆者は暗所での撮影では、必ずLUMIX S5IIを持ち出している。
階調感やディテールの細かさだけではなく、暗所での撮影時における「AFの合焦性能の高さ」は特出している。他社製のミラーレスカメラではAFが迷って合焦しないシーンでも、LUMIX S5IIはほぼ迷うことなく合焦する。さらに精度に関してもなかなかで、十分に実用性の高い暗所運用となる。これは室内でのポートレートシーンなどでもありがたい。また強力なボディー内5軸手ぶれ補正機構が搭載されているため、ブレに強いのも嬉しい。

Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art

Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art

ファインダーに関してもLUMIX S5に比べて大きく変化。ファインダー内部のガラス構造を見直し、より見やすい電子ビューファインダーとなっている。長時間での撮影においても、疲れづらいのはLUMIX S5から引き継いでおり、撮影に集中させてくれる。巷ではちょっとした騒動になっていた電子ビューファインダーのフレッシュレートの問題も、すでにメーカーサイトにアップされている最新ファームアップを行えば、AF-C時でも最大で60fpsでの常時ビューが可能となる。これに関しても30fpsでも気にならなかったが60fpsになったことで、より滑らかな電子ビューファインダーとなり、撮り逃しが少なくなる。

さらに、ビギナーモデルとしての位置付けだったLUMIX S5の泣きどころだった搭載バッファーのキャパ不足を克服。LUMIX S5IIではS5の約4倍の容量になったことで、連写時や複雑なフォトスタイルとRAWの同時記録での撮影時のもたつきがだいぶ解消されている。モデル撮影などテンポを大事にした撮影でも、待機する時間が劇的に減り、スムーズな撮影が可能。被写体やモデルを待たせることがなく、なんとなく現場の雰囲気も良くなる(笑)。それ以外にも、ジョイスティックの稼働方向が4方向だったのに対し、LUMIX S5IIからは8方向になり、AFの任意移動がスムーズになった。 また堅牢性が高く、砂浜撮影などカメラにとってはまさに悲鳴を上げたくなるシーンでの撮影でも、強力な防塵・防滴性能のおかげで、カメラが壊れたことはない。この辺りの信頼性の高さがLUMIXの良さでもある。

夕暮れでかつ逆光というAF-Cにはとても意地悪な条件だが、動き回るモデルにしっかりと追従してくれた。人体>顔>瞳という感じで優先順位を自動で判断してくれる

ブランコに乗って揺れるモデルにもしっかりと「顔」にAF枠が出て、追従してくれた。動きのある写真を撮るには最高なAFシステムだ

今回の作例撮影では、ほぼほとんどのシーンで「人体認識AF」をオンにした状態で撮影している。LUMIX S5IIになって認識率もややアップしたように感じた。この人体認識AFだが非常に使いやすい。ポートレート撮影時にはモデルが正面ばかりを向いているとは限らない。そんな時に顔および瞳のみの認識だと、後ろを向いた際に見失うのでAFが急に合わなくなることがある。しかし、LUMIX S5IIの場合であれば、「人体」として認識するので、身体全体にターゲット枠が移動する。あくまでも「人」には合い続けるのだ。時間のない現場での取り逃し率が大幅に下がり、画角や表情に集中できる。ぜひ、ポートレートをメインに撮影している人にはおすすめしたいカメラだ。

Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art

Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art

メーカーとしてはあくまでも「ビギナーからミドル」をターゲットにしたカメラという位置付けのようだが、もう少し上の層でも十分に対応できるカメラだ。上記のように大幅に機能アップしていることで、LUMIX S5とは外観だけが似ているだけで、そのほかはまるで「別物」だ。携帯性が抜群なので、複数の単焦点レンズを携えて街中で撮影するなど、アクティブな撮影が可能になるだろう。あらゆるシーンで高いパフォーマンスが発揮できるミドルカメラとなっている。最後にこの機能性の高さで価格が非常に安価なのもとても好感が持てる。より多くの人の「フルサイズ」入門機になれるだろう。

文・写真/大貝篤史  モデル/中野ももか

■メーカーサイト LUMIX S5II 
https://panasonic.jp/dc/products/s_series/s5m2_s5m2x.html?utm_source=google&utm_medium=cpc&utm_campaign=DC_NC_S_G_Brand&utm_content=DC_NC_S_G_Brand_Type-S5II&utm_term=S5II_n_20230107_s-series-s5m2-s5m2x_n&gad=1