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Nikon Z6III SHOOTING REPROT

約6分

Nikon Z6III
SHOOTING REPORT

-Portrait-

もう「6」シリーズとは思えないほど
高機能・高性能なミラーレスカメラ

ニコンから発売されたNikon Z6IIIはZシリーズのスタンダードであり入門カメラとしての位置付けを持った「6」を背負っているカメラだ。筆者もNikon Z 6は長く愛用。軽量かつコンパクトなボディーに、丁度いいスペックでありながらも十分な性能を搭載している6シリーズは、外ロケには最高のパートナーだ。
その6シリーズが第三世代「Nikon Z6III」にバージョンアップ。それなりに夢を膨らませながらのレビューになった。

ボディーでデザインは、ほぼ旧モデルをそのまま継承。一部ゆるい変更点はあるにしても、従来のモデルを使用しているユーザーならそれほど違和感なく使える。ニコンらしいグリップはそれだけで安心感を抱く。外観上の大きな変更点は、チルト式背面モニターからバリアングル式背面モニターに変更になったことだ。これに関しては、賛否が分かれているが、ハイアングルやローアングルでの撮影時においては、どちらも有効なのでスチル撮影でも動画撮影でもそれほど大きな差はない。個人的ではあるが、バリアングル液晶の場合には、サイドに液晶が出てきてしまうので、撮影の取り回しに影響が出ることがあるかもしれない。その点ではチルト式のほうが扱いやすい印象を受けた。

格段に良くなったEVF

実際に屋外でのポートレート撮影で進化を感じたのは、EVFだ。特に海でのポートレート撮影の場合には、日光を妨げる場所がない。最近は背面モニターを見ながらの撮影スタイルが増えてきているが、その場合には日差しが直接入り込み、ほとんど見えない状態になる。これでは撮影どころではない。そういうこともあり、EVF搭載モデルであることは必須なわけだが、Nikon Z 6IIIのEVFは輝度がアップしたことで細かいディテールがしっかりと分かるのでピントの山や顔・瞳認識AFがきちんと捉えているかなどの確認などが非常にしやすいEVFだ。色彩に関しても派手さはなく、光学ファインダーのような正確さがあり、一眼レフカメラを生産している老舗メーカーであることを再認識させられる。動体撮影での残像現象も気になることはなく、違和感のない見え方だ。砂浜を小走りで歩くモデルをEVFをのぞきながら撮影しても、残像感がないのはうれしい。もともとZ 6を使用していた際にEVFが見やすいと感じていたが、このEVFをのぞいてしまうと後戻りできない(笑)。特に40、50代ぐらいからは老眼に悩みだす世代だ。背面モニターで撮影しようとすると、どうしても距離を稼ぐために腕が伸び切ったスタイルでの撮影になる。そんな「大人の事情」を考えても、EVFは重要だ。

Nikon Z6III + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Nikon Z6III + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Nikon Z6III + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

進化を感じたAF性能

AF性能に関してもかなりの進化を感じた。顔・瞳認識AFで撮影していたが、AFの追従性能や精度はNikon Z 6IIよりも確実に良くなっている印象だ。Z 8やZ 9と同様の画像処理エンジンを搭載しているので、その恩恵は十分に感じることができる。AF-Sでの撮影が多いということもあり、ZシリーズのAFには不満はなかった。AFの合焦速度と精度が上がったのなら、純正レンズと組み合わせて自動認識AFをフルに使ったほうが、撮りこぼしのない撮影が可能だろう。

Nikon Z6III + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

また、縦揺れにも非常に強いAF性能だと感じた。自動認識系の場合には横移動はかなり認識できるのが、縦に小刻みに動く被写体にはなかなか追従しきれないケースがある。Nikon Z6IIIに関しては、身体を揺らしながら走るモデルの顔にもしっかりと追従し続けた。条件にもよるとは思うが、躍動感のある撮影をしたい人にはおすすめだ。

ポートレートでは逆光での撮影が多いのだが、Nikon Z 6IIIは逆光時のAF性能が向上していることを実感できた。Nikon Z 6では迷ってしまって、なかなかAFが合わないシーンなどがあったが、このカメラなら合焦率が高く、小気味いい撮影ができる。

Nikon Z6III + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S ピクチャーコントロール:ピュア

ポートレート撮影向けの機能が盛りだくさん

Nikon Z6IIIには、ポートレート撮影をサポートしてくれる機能がたくさんある。ピクチャーコントロールには「リッチトーンポートレート」というモードがあり、白飛びを抑えながらも、人肌の階調感をしっかりと残してくれるモードだ。アクティブDライディングを強くしてしまうと、ディテールがなくなり、立体感がそこなわれることがあるが、このモードなら立体感を維持してくれるのでベース素材としての用途にも耐える。

Nikon Z6III + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

また「美肌効果」という機能がある。この機能は肌を滑らかにしてくれる機能で、肌荒れや毛穴などを目立たなくしてくれる。この機能に関しては、動画撮影のほうが有効だと感じた。もちろん、信頼度の高い防塵かつ防滴性能は相変わらずで、海や砂浜での撮影でもそれほど気にせず使えるのは嬉しい。カメラはどこまで行っても、やはり堅牢性だ。ポートレート撮影は多様化しており、意外にカメラにとって過酷なシーンでの撮影が増えている。そんな現状にも耐えることができる信頼感は何ものにも変えがたい。

Nikon Z6III + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S ピクチャーコントール:ピュア

日々進化を遂げるミラーレスカメラ市場だが、これから重要になってくるのは、より「人間らしい」ことだろう。スペックが各社似てきているからこそ、使い心地やブランド、撮る楽しさ、パッションなどが求められる。もっとこのカメラで色々撮ってみたいと思える「何か」が必要なのだ。Nikon Z6IIIにはそれが十分にある。こういうカメラはロングセラーになる。逆にNikon Z7IIIが出るとしたら……。これを超えるカメラをどう組み立ててくるのか。楽しみだ。

□撮影/オーマイ □モデル協力/堀名雫

■メーカー情報サイト
Nikon Z 6III  https://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z6_3/