「作品づくりに活かした写真集とは」
写真集を読み取ることで行き詰まった写真ライフが変わるかも!?
-Magazine-
皆さんは写真上達のために何をしているだろうか。新しいカメラやレンズを購入する、撮影機会を増やす、写真教室に通う……。それぞれ自分に合った方法で日々努力しているだろう。その中に「写真集を見る」ということを付け加えてみてはどうだろうか。もしくはすでに実践しているヒトもいるかもしれない。
SNSが盛んな昨今では、他人の写真を見ることがかなり手軽にできる。そこには膨大な数の写真が日々更新され、刺激になることが多い。ただSNSが、スマホの画面サイズでしか見れなかったり(PC版での閲覧は除く)、タイムラインで流れていくため、見ていたも数秒のケースが多い。写真上達のインプットとしてはやや煩雑すぎる。じっくりと適度なサイズで見ることが重要で、撮影者の「意図」をしっかりと読み取るには、やはり写真集を見るのがとても有効だ。
写真集は電子版ではなく、できれば印刷(出版されたもの)されたものがいい。懐古主義なのではなく、撮り手の写真表現は、紙質なども含めて「表現」としていることが多く、紙選びも刺激になるし、それを含めて見たほうが、撮り手の意図を100%汲み取れる。「写真はあくまでも成果物である」というアサヒカメラの編集時代の考え方は正しいとおもっている。それを具現化してくれるのは、写真集と写真展だろう。20〜30代の写真愛好家が「やっぱり写真展がいい」と口を揃えて言うのは、そういうことだろう。余談だが、写真集を自分で発行することはかなり敷居が高いが、写真展ならグループ展などでコストを「割り勘」できるので、自分の写真をアナログ化したいヒトには比較的安価な方法だ。
だからこそ、写真集というのは「特別」なものであり、そこに至る思いは大きい。写真のチカラが集まった、いわば「写真の魂」のようなものなのだ。
写真表現に迷ったときは、自分の好きな作家の写真集やそのジャンルで話題になっている写真集などを購入してみるといい。意外にいいヒントがたくさんあって、自分の写真のマンネリ化を解消できることがある。筆者は自分な好きな作家の写真集は購入し、構図や表現の参考にしている。そうすることで、凝り固まった自分から脱するためのヒントを得ることができる。その際に気をつけたいのは、あくまでも参考にすること。真似てしまうとそれはただの「コピー」になってしまう。そうではなく、参考にし自分のものにしていく過程で、自分らしい写真になっていく。そのことが重要だ。これがいいというわけではないが、筆者が影響を受けた写真集を紹介しよう。
#01 「Pitter-Patter 八木莉可子写真集」
写真家・石田真澄さんが女優の八木莉可子さんを撮影した写真集。全編フィルムで撮影された写真は二人の関係性を色濃く残し、八木さんの自然体が素敵な写真集。撮り手と写り手の距離感や信頼感、親密度がいかに写真にとって重要なのかを教えてくれる1冊。
#02 「SEA STORIES Haruka Ayase」 綾瀬はるか写真集
写真家・石田真澄さんが女優の八木莉可子さんを撮影した写真集。全編フィルムで撮影された写真は二人の関係性を色濃く残し、八木さんの自然体が素敵な写真集。撮り手と写り手の距離感や信頼感、親密度がいかに写真にとって重要なのかを教えてくれる1冊。
#03 写真集 「海街diary」
映画「海街 diary」の撮影過程で写真家・瀧本幹也さんが撮影した写真で構成された写真集。比較的ロートーンなものが多いが、その光の使い方が絶妙にいい。こちらもフィルムカメラで撮影されているとのことで、フィルムでポートレートやスナップを撮影しているヒトにもおすすめの一冊。
#04 「寝起き女子」
女性らしさとは何かをストリートに撮影している写真家・花盛友里が撮影した「寝起き」女性の写真集。花盛さんはモデルの家で撮影するケースが多く、モデルの生活の一部を嫌味なく切り抜いている。女性目線ならではのエロスがあり、そこには美しさがしっかりと存在する。
#05 「私が撮りたかった女優展シリーズ」
今話題の写真家がそれぞれ撮りたい女優やモデルを撮影する写真展「私が撮りたかった女優展」の写真集バージョン。この写真集は色々な写真家の写真を一冊で楽しめるのでとてもお買い得な写真集。この写真集で参考にしているのは「構図」。構図のバリエーションが豊富なため、新しい構図を開発するのに参考にしている。
#06 「ハルカノイセカイ 05」
筆者が大好きな写真家・濱田英明さんが女優・綾瀬はるかを撮影した写真集。この写真集は単純に自分が使っている機材と同じLUMIX S1Rで撮影されていたので記念に購入。憧れの写真家が自分と同じ機材を使ったら、どんな写真が撮れるのかいい参考になる写真集です。
#07 「F.I.L.M」
新興系Photographerがそれぞれ女優を撮影している写真集。この写真集の特徴は富士フイルムから発売されている「写ルンです」で撮影されていること。なんとなく作品を撮れないだろうカメラでしっかりと作品性のある写真を撮れているところはさすがだ。20〜30代に人気のある写ルンですだからこそ、写真を身近なものに感じさせてくれる写真集だ。
#08 「White Noise」
尊敬する写真家・中藤毅彦さんが撮影したスナップ写真を収めた写真集。モノクロームで撮影された街中でのスナップは圧巻。独特のセンスと切り口でその街の空気感をしっかりと切り抜けている。スナップ写真とはどういう写真を指すのかという指針になりうる作品。モノクロームな写真ばかりではなく、スナップ写真を撮るヒトには絶対におすすめしたい写真集だ。
#09 「Down on the Street」
スナップ写真家の中藤毅彦さんが2024年夏にリリースした写真集。世界中の都市で撮影した重量感のあるスナップ写真作品がズラリ。「スナップ写真とはなんぞや?」を教えてくれる一冊だ。中藤毅彦さんといえばモノクローム写真。その荒々しくも繊細に描かれたモノクロームの面白さを感じ取れる。
ここで紹介した写真集はあくまでも筆者が参考にしている写真集だ。撮りたいジャンルや方向性によっては「自分なりのオシ写真集」があるはずだ。写真集は高いものだと数万円、平均的には4000円前後と高価であることは間違いない。しかし、一度購入してしまえば、何度でも見ることができるし、揃えていくことで自分がどこに立ち戻ればいいのかを教えてくれる「バイブル」になりえる。そう考えれば決して高い買い物ではない。他者が撮影した写真をじっくりと鑑賞することは、自分の写真に新たな息吹を吹き込んでくれる。ぜひ、自分が好きな写真集をコレクトしてほしい。
□文・撮影/編集部