Nikon Z50II
SHOOTING REPORT
APS-Cモデルとしては
最高位の出来栄えの
小さなフラッグシップカメラ
-REPORT-
2024年の12月発売予定のNikon Z50II。前モデルであるNikon Z50から5年の歳月を経てリリースされた。その進化は凄まじく、前モデルとは「別物」であると思うほどの進化ぶりだった。
ニコンのミラーレスカメラ「Zシリーズ」では、DXフォーマット(APS-Cセンサー)のモデルは、Z fcとZ50IIの2モデルしかラインナップされていない。どちらもタイプが違うカメラなので、実質的には一択というのが現状だろう。また今までのZ50はさすがに少しプアーなイメージがあったため、ビギナー層やハイアマチュアのセカンドカメラなどにはZ fcを選ぶ傾向だった。 その縮図はNikon Z50IIの登場で、かなり変わるだろう。ハイアマチュアなども積極的に選びたくなる高性能ぶりで、プロユースでも十分に使えるのではと思えるほどだ。エントリーカメラでも魅力をくすぐる……。これこそがニコンのカメラらしい。
劇的によくなったファインダー周り
ボディーサイズは前モデルとほぼ変わらず。デザインは少し変更されている。ファインダー部分の出っ張りがあったNikon Z50だが、そのあたりが改良され、出っ張りが減りすっきりした印象だ。筆者はメガネをかけて撮影するのだが、覗きづらいということはなかった。また今回の改良点で大きかったEVFの輝度が大幅にアップしている点だ。Nikon Z50は最高輝度が500 cd/m2だったのに対して、Nikon Z50IIは1000 cd/m2まで大幅にアップしている。この変更の効果は絶大で、とにかくファインダーが見やすい。昼間の晴れ間で撮影していたのだが、EVFの輝度が高いため、快適に撮影できた。撮影当日はNikon Z fcも使っていたのだが、正直Z fcがとても暗く感じるほどだった。20〜30代の世代は背面液晶を見ながら撮影するスタイルが増えているが、撮影場所の条件では、ファインダーを覗きながらのほうが撮影しやすいことがある。そんな場合にも「見づらい」と思うことはなさそうだ。少し暗くなるトワイライトのシーンでも使用したが、ディテールが見やすいため、構図決めやピント確認などもしやすい。これなら十分に作品撮りなどにも使っていけるカメラだと感じた。
ニコンらしいボディーメイク
グリップ部分に関しては、自然に握れる相変わらずの「ニコンクオリティー」で心地よい。筆者はNikon Z fcを愛用しているため、なおさらそう感じた。少し小振りの手の人でも握りやすい大きさなので、疲労感は皆無だ。またボタン類なども操作が右手ですべて行えるように考えられた配置で、小気味に撮影できる。重量に関しても十分軽量でショルダーからぶら下げていても、疲労感はない。 背面液晶モニターはバリアングル式を採用。動画撮影なども考慮した結果だろう。ハイアングル、ローアングルでの撮影が用意にできるため、スチル撮影でも十分にその恩恵を感じる。タッチAF対応なので、無理な姿勢でも、AFを操作しやすいのもいい。また、防塵防滴性能も備えているため、悪天候や悪条件下での撮影でもある程度までは対応できそうだ。
進化したAF性能で快適な撮影ができる
Nikon Z50II + SIGMA 56mm F1.4 DC DN | Contemporary 1/1000秒・f2・ISO100
実際にスナップポートレートを撮影してみたが、撮影開始から感じたのはAF性能の向上だ。プロユースモデルである「Nikon Z 9」から引き継がれたAF性能を謳っているが、実際に従来モデルよりも精度、速度ともに向上していることを感じた。メーカーが言う「向上」を実際では感じないケースなどもあるのだが、このモデルに関しては十分に感じられる。特に、被写体認識AFを使った場合のAF枠の挙動がスムーズかつ正確。モデルの顔や瞳にしっかりと追従し続けてくれるし、合焦速度も速い。DXフォーマットのモデルでも十分に作品撮りができるクオリティーのAFだ。認識してくれる被写体も、人物(顔、瞳、頭部、胴体)、犬、猫、鳥、飛行機、車、バイク、自転車、列車など9種類の被写体を検出してくれる。被写体検出を「オート」にすることで、カメラが自動で識別して合焦してくれるので、ビギナーでも瞬間をのがさない。
動き回るモデルをしっかりと認識してくれるため、構図に集中できた。筆者のように背景も活かしたようなポートレート撮影の場合に、モデルをどの位置に置くかを瞬時に考えながら撮影している。そんなときにでも、構図を決めることに専念できるため、作品のクオリティーを上げることができる。トワイライト時などのやや低照度のシーンでも、精度は大きく落ちることはなかった。このあたりも評価できる。
ニコンらしい基本に忠実ないろづくり
Nikon Z50II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary 1/1600秒・f1.4・ISO100
画づくりに関しても「EXPEED 7」らしい色づくりで、全体的に落ち着いたトーンだ。ニコンは記憶色だと言われているが、その場の色を忠実に描いているような色調で、どんなユーザー層でも安心感のある色方向性だ。個人的にはRAW撮影で現像処理してしまうので、純正カラーをそのまま使うことはないが、ベースカラーがいいからこそRAW現像時にも活きてくる。特にハイライトはよく粘るので、少しハイキー気味で撮影しても、きちんと色情報が残っているため、雲のグラデーションなども自然に表現できている。また人肌のトーンに関しても同様で、自然な階調感を維持できているので、立体感と滑らかな生命力を感じる人肌が好印象だ。
Nikon Z50II + SIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporary 1/4000秒・f1.8・ISO100
Nikon Z50II + SIGMA 56mm F1.4 DC DN | Contemporary 1/1600秒・f2・ISO100
Nikon Z50II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary 1/4000秒・f1.4・ISO100
Nikon Z50II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary 1/4000秒・f2・ISO100
Flexible Color Picture Controlが楽しめる
Nikon Z50II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary 1/2500秒・f1.4・ISO100・Clear Portraitを使用
Nikon Z6IIIについで搭載された「Flexible Color Picture Control」。Nikon Z5oIIでは軍艦部に専用のボタンが追加され、簡単にセレクトできるようになった。この機能は予め自分の思い描いたカラーをPC上で作成したプロファイルをカメラ内に登録しておける機能だ。さらにニコンのカメラを使っている写真家やフォトグラファーが監修したイメージレシピもWebのクラウドサービス「Nikon Imaging Cloud」で公開。自分のイメージに合ったものをダウンロードし、カメラにいれることもできる。今回の撮影では写真家の酒井貴弘さんの「Clear Portrait」を事前にカメラに入れて撮影してみた。ホワイトバランスや露出は自分で決めていかないといけないのでコツが必要だが、イメージレシピを活かした撮影ができ、楽しめる。なによりも憧れの写真家の写真に近づけることができるのは、ビギナー層には嬉しい機能だ。
最終的には、自分だけの色をPCソフト「NX studio」で作り込み、SDカード経由などで登録すると面白い。筆者も少し研究して自分カラーを作り上げてみたいと思った。
動画性能が格段にアップ
動画に関しても大幅に進化。Nikon Z50IIから「N-Log」にも対応。10bitでの撮影も可能なため、グレーディングを前提とした撮影可能だ。実際に簡単だが撮影してみたが、Final Cut Proでのグレーディングもしやすく、ニコンからリリースされているREDと共同開発したLUTをあててみたが、細かい調整もしやすく、SNS用の簡単な動画撮影なら十分にこなせる。その他にもYoutubeやVlog向けに「商品レビューモード」が追加。商品を体より前に差し出した際にも、ピントが商品の方にしっかりと合う。さらに、全面にRECランプを搭載。自撮りや遠隔での撮影での撮り逃しを防ぐことができるようになった。細かいところだがユーザーニーズに応えてくるところがニコンらしい。
結局、今回のようなワンオペでの撮影でもっとも重要なのは、AF追従性能と精度だ。画像エンジンが「EXPEED 7」になったことで、AFをカメラ任せにできるシーンが増え、結果動画撮影が十分に可能になったと言える。
Nikon Z50II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary 1/320秒・f1.4・ISO100
Nikon Z50IIの登場で、APS-Cミラーレスカメラのマーケットも少し変わるかもしれない。今までは富士フイルムの独壇場だったが、新たな選択肢ができたと言える。純正レンズがまだまだ少ないが、SIGMAからも明るい高性能な単焦点レンズがリリースされている。今回の撮影では、SIGMAのContemporaryシリーズを3本使って撮影したが、どのレンズも切れのある描写力で写りにこだわりのあるニコンユーザーにも、十分に受け入れられるレンズだ。純正とサードパーティ製品を組み合わせれば、よく使う「レンズ基本セット」は揃うはず。今後は純正のDXフォーマット専用レンズが増えてくることを期待したい。購入後、FXフォーマットにステップアップ予定なら、FXフォーマット対応のレンズを購入してしまうのも手だ。Nikon Z6IIIを小さくしたような高性能ぶりをフルに使うには、レンズも小さめを希望したい(笑)。とはいえ、DXフォーマットでも本格的なスチル・動画撮影が可能なカメラであることには間違いない。このカメラで、まずは腕を磨いてみるのがいい。
Nikon Z50II + SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary 1/80秒・f1.4・ISO100
■文/編集部 写真/オーマイ モデル協力/青柳うみ
■製品サイト
Nikon Z50II
https://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z50_2
SIGMA Contemporaryシリーズ
https://www.sigma-global.com/jp/contents/sigma-zmount-lenses