
FUJIFILM GFX100S II
SHOOTING REPORT
厚みのある豊かな
写真表現が実現できる
ラージフォーマットカメラ
-REPORT-
富士フイルムから発売しているGFXシリーズの中でも写真目的での最上位モデルとして君臨する「GFX100S II」。このモデルの最大の特徴は、何と言っても、ラージフォーマットから描き出される写真の厚みだろう。中判カメラならではの階調感と解像度の高さ。その写りすぎるほどの表現力の高さから導き出される画は、その場の空気感を惜しみなく写し込む。
正直な話、これほどまでの高解像度が必要なのかという問いに対して「35mmフルサイズでも十分」という意識はあった。扱いづらいラージフォーマットよりも、扱いやすい写真素材のほうが運用の面ではアドバンテージが高いと思っていたからだ。ましてや、外ロケで使用するようなカメラではない……。それが中判カメラへのイメージだ。


そんなイメージを思いっきり粉々にしてくれたのが「GFX100S II」だ。筆者はGFX50Rは保有していたことがある。その時の印象は、ラージフォーマットだからこその利点はありつつも、全体的にもっさりとした動作で、AFに関してもそれほど速いとは言えない速度。出てくる画力はあるが、運用面でのアドバンテージがあまりなく、結局35mmフルサイズセンサーのカメラをメインに使っている。またラージフォーマットならではの階調感や解像感を使いこなせるほどの「腕」がないということを痛感させられ、なおさら難しいと感じていた。その印象をひきずったまま、GFX100S IIを手に、苦手だと思っている外ロケでの使用……。ネガティブになっても当然だろう。しかし、実際に使用してみた印象はかなり好印象だった。

まず、AF性能が飛躍的に向上している。もたつき感もそれほどなく、合焦速度も精度もいいので、あまり激しく動かない被写体であれば十分に実用レベルだ。下の写真は、海際で走り回っていたモデルをAF-Cで追いかけながら撮影した一コマ。X-T5などAPS-Cサイズのセンサーモデルと同等まではいかないが、GFX50Rだと少しテンポが悪かったシーンでも、GFX100S IIなら問題なく、気持ちよく撮影ができる。
被写体検出に関しても、認識率はよく、モデルの顔ないし瞳にしっかりと追従してくれた。これだけAF性能が向上すると、スポーツや飛行機、鉄道撮影にも使っていける。「被写体を選ばない中判カメラ」の登場である。

FUJIFILM GFX100S II + GF80mmF1.7 R WR・1/900秒・f3.6・ISO80
GFX100S IIの進化はAF性能の向上だけではない。ボディ内5軸手ブレ補正機構に関しても、従来モデルよりも約2段アップの8.0段に向上。小さなブレも気になるラージフォーマットでも、これだけ強力な手ブレ補正があれば、少々ラフに使っても大丈夫。さらに常用感度がISO80に拡張。屋外のポートレート撮影のように、絞りを開放気味での撮影がしたい場合でも、シャッター速度を稼ぐことができる。また、ISO80にすることで、ノイズ感が少なく、広いダイナミックレンジを活かした撮影が可能だ。ボディーサイズと重量に関しても、一昔前のフラッグシップフルサイズ一眼レフカメラと同等で、屋外の持ち出しにもそれほど抵抗は感じなかった。

FUJIFILM GFX100S II + GF80mmF1.7 R WR・1/2500秒・f1.7・ISO80
レンズ群に関しては、非常に優秀だ。今回3本のレンズを借りて撮影したのだが、どのレンズも描写力が驚異的。髪の毛の細かい線までしっかりと写し出す。有効画素数約1億200万画素のセンサーをフルに使いこなせるほどのレンズ描写力を備えている。開放値からすでにキレキレで、周辺までかなりシャープ。細かいディテールまで本当によく写る。さらに、ボケ味に関しては35mmフルサイズセンサーの画と比べてもしっとりとした懐の深いボケ味なので、独特な世界観を演出できる。ポートレート撮影の場合には「ボケ感」が重要になってくるが、決して硬いボケ味なのではなく、柔らかいトロリとしたボケ味は、まさにこのレンズとカメラの組み合わせでないと体験できないだろう。絞り込んでも、写真が持つ雰囲気は大きく変わることない。解像感を活かしたキリッとした描写で、まさに「中判カメラ」と思わせてくれる画力だ。

FUJIFILM GFX100S II + GF110mmF2 R LM WR・1/750秒・f7.1・ISO80

FUJIFILM GFX100S II + GF80mmF1.7 R WR・1/850秒・f2.8・ISO80

FUJIFILM GFX100S II + GF110mmF2 R LM WR・1/2500秒・f2・ISO80
特に気に入ったのは、GF110mmF2 R LM WRだ。独特な粘りのあるボケ味と美しすぎるボケ感が備わったレンズで、開放値からf4付近が個人的には好み。被写体を大きく際立たせることができる圧巻のボケ感だ。絞り込みたくなるシーンは、まさに「背景コントロール」のときだけ。
全体的な使いやすさという意味では、GF63mmF2.8 R WRもおすすめ。35mm判換算で50mm相当と扱いやすい焦点距離のため、スナップ撮影などにはこちらのほうがいい。また、レンズ自体も約405グラムと中判カメラ用としては軽量。軽い方には入らないGFX100S IIとの組み合わせた際のバランスの良さがいい。

FUJIFILM GFX100S II + GF110mmF2 R LM WR・1/1400秒・f2・ISO80

FUJIFILM GFX100S II + GF63mmF2.8 R WR・1/2400秒・f4.5・ISO80
GFX100S IIはラージフォーマットカメラの概念を変えたカメラだ。どこか「オーバースペック」をフルに活かしきれないイメージだったが、確実に使い勝手が向上している。言うならば「普通に使える高性能ラージフォーマットカメラ」だ。もちろん、価格的には決して「手軽」ではないが、あくなき解像感と画力を求めるなら、いっそGFX100S IIを中心とした撮影システムにするのも選択肢としてアリだと感じた。

FUJIFILM GFX100S II + GF80mmF1.7 R WR・1/3000秒・f2.2・ISO80

FUJIFILM GFX100S II + GF110mmF2 R LM WR・1/3000秒・f2・ISO80

FUJIFILM GFX100S II + GF80mmF1.7 R WR・1/1700秒・f2.0・ISO80
□モデル協力/櫻子
■製品情報ページ
FUJIFILM GFX100S II
https://fujifilm-x.com/ja-jp/products/cameras/gfx100s-ii/