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CP+2026現地レポート:過去最多出展とプログラム800超。それでも足りない「物語」とは

2月26日からパシフィコ横浜で開催された、カメラと写真映像のワールドプレミアショー「CP+2026」が3月1日、幕を閉じた。4日間の来場者数は合計58,294人(速報値)で、昨年から2,500人ほど増加したという。その盛況ぶりと見えてきた課題についてレポートする。

2026年2月27日に開催されたCP+2026の会場の様子。場所はパシフィコ横浜。

ドイツ・ケルンで開催されていた写真映像関連の見本市「フォトキナ」が終了したため、CP+はその存在感が高まっている(2026年2月27日撮影)

CP+2026の来場者は5万8千人、過去最多の出展社数

CP+(シーピープラス)を主催する一般社団法人 カメラ映像機器工業会(CIPA)によると、CP+2026の来場者数は以下のとおりだ。

2026年2025年
2月26日(木)10,012人9,840人
2月27日(金)13,483人12,516人
2月28日(土)19,499人18,771人
3月1日(日)15,300人14,664人
4日間の合計58,29455,791人
出典:一般社団法人 カメラ映像機器工業会(CIPA) 数字は2026年3月2日発表の速報値に基づく。

出展社数は149社で、うち新規出展社は45社、海外出展社も38社と、いずれも過去最多を記録したという。

筆者も2014年から毎年訪れているが、今年は特にカメラ・レンズ以外の周辺機器やグッズが充実していた。事実、年を追うごとに「あれ? こんなブランドあったっけ?」と思う場面が増えている。

CP+2026の公式サイトの会場マップにあるとおり、例年、カメラ・レンズの大手メーカーのブースが外周に並び、その中央部に周辺機器やグッズの小規模ブースが並ぶ。今年は特にこの小規模ブースが充実していた。

いささか強引だが、大手メーカーを分厚い皮、小規模ブースを餡子に見立てれば、餡子がぎっしり詰まった「おやき」のような印象だ。

CP+2026の出展ブースの並びを「おやき」に見立ててイメージした概念図。

会場マップをもとに筆者がGeminiを使用して作成

餡子の部分の顔ぶれは多彩だ。画像保存メディア、ストラップ、カメラバッグ、三脚、天体撮影機器などを扱うお馴染みのブースもあれば、アウトドア用品で有名なColemanやCAPTAIN STAGのカメラアクセサリーブランド「CSP」なども存在感を示していた。

キャンプ用品のメーカーがブースを出店している例。

CSPのブースにて。筆者もキャンプ好きなので、カメラと相性がいいのはよくわかる(2026年2月28日撮影)

写真も「モノ」から「体験」へ

言ってしまえば、写真・カメラの世界でも「コト化」が進んでいるということだろう。

そりゃそうだ。スマホなどの普及で撮影機器を持つのが当たり前の今日、「一億総カメラマン」などと言われる時代なのだ。こうなると、カギになるのは「経験や楽しみ方をどれだけ提案できるか」である。

実際、CP+2026の会場にはその「素材」がたくさんある。

前出の「おやき」の周辺には、出版社などのブースが連なる「CP+ブックマルシェ」や、写真展のブースがある。隣のアネックスホールでは、CIPA主催の「トークステージ」会場があり、連日、大物写真家やクリエイターが講演。184組が自主制作本のZINEを展示する「ZINE FAIR at CP+」も開催された。

トークステージの模様については下記の記事を参考にしてほしい。

ここまで来れば、写真・カメラ好きの人なら、会場のどこかに「自分の好きな場所」を見つけられるはずだ。

だが、現実はそんなに甘くはない。むしろ、現場は欲望への刺激で満ちた「カオス」なのだ。

まず、プログラムの圧倒的な多さである。ステージやワークショップは800本超。公式サイトで探すのも一苦労な量だ。多くのプログラムはオンライン配信を実施しているが、CP+は「カメラと映像写真のワールドプレミアショー」。やはり「大きな画面やプリントで見たい」と思うのが本音だろう。

公式サイトなどから事前に情報を集めて、自分の訪問ルートを組めば良いのではないか。そう思う人もいるかもしれない。だが、公式サイトの「コンテンツ一覧・検索」は検索性が良いとは言い難く、配信日、出展社、撮影者のレベル、写真か動画かといった軸でしか検索できない。例えば、「ポートレート撮影に関係する話が聞きたい」と思っても、プログラムを見落としてしまいかねない。

「予期せぬ発見」という魔力

そして、効率良く会場を回る上での最大のネックであるものの、会場まわりの最大の楽しみでもあるのが、「予期せぬ発見」である。筆者も例年、この魔力に負けて、参加予定だったセミナーに行きそびれている。

筆者が本来の目的を忘れて夢中になった商品の代表例が富士フイルムの「チェキ instax mini Evo Cinema」。

富士フイルムの「チェキ instax mini Evo Cinema」。1930〜2020年の10種類の「ジダイヤル」エフェクトを切り替えることで、その時代にタイムスリップしたかのような撮影体験ができる(2026年3月1日撮影)

今年は、富士フイルムのブースを訪問した際、「チェキ instax mini Evo Cinema」で子どものように遊んでしまった。タイムスリップしたような写真・動画を撮影できるエフェクトに魅了され、本来の目的を果たすことなく時間を費やした。

おかげでその後の予定は狂い、会場内を歩き回ってやっとたどり着いたセミナーは人気で立ち見…..。そんなことを繰り返した結果、筆者は連日15,000歩以上歩くことになった。しかも、会場はコンクリートの上である。最終日には持病の腰痛が悪化し、知り合いの写真家に余計な気遣いをさせてしまった。

3月1日の日曜日午後にニコンのブースで行われた人気写真家のセミナー。混雑ぶりはご覧のとおり。

人気写真家のセミナーは定刻に行っても立ち見になる。日曜日だとご覧のとおり(2026年3月1日撮影)

欲求を作品に昇華するまでの「物語」を

余談が過ぎたが、そろそろ主催者側は来場者のための「物語」の提供を本格的に検討したほうが良い。マーケティング的に言えば「カスタマージャーニーマップ」になるだろうか。

写真を撮る人の究極のゴールは、「良い作品を作りたい(撮りたい)」のはず。そのために必要なプログラムを一筆書きのように体験できることが理想ではないか。

例えば、写真家の思想や撮影・展示に関する知識、写真とどう向き合うかといった話は主催者側のトークステージで聞く。撮影技術やノウハウは各社の写真家のセミナーで学び、ブースで実機を試す。作品の発表については写真展やZINEフェア、出版ブックマルシェをのぞいて参考にする、といった具合だ。

それらを、スナップ、ポートレート、鉄道、風景、天体……といったジャンルごとに分けて考えるのが望ましい。「撮りたい」という欲求が作品に昇華されるまでのフローを書き出し、それに沿った形でブースの回り方を助言してはどうか。

いわばプログラムのキュレーションのようなものだが、800超もあるのだから、一つのジャンルだけでも何通りもの「ブースの歩き方」が提案できる(真面目な話、筆者に担当させてほしいくらいだ)。先に例えた「おやき」で言えば、皮と餡子の絶妙なバランスを味わえたほうが美味しいに決まっている。出展社側から見ても、エンゲージメントの高いユーザーのブース訪問が期待できるだろう。

今やCP+は見本市とは言い難いほどに拡大し、内容も変わりつつある。撮影機材の選択肢も増え、来場者層も多様化した。主催者のトークステージ、各出展社ブースのセミナーや展示、ZINEフェアや写真展があまりに多様で、ともすると無秩序に乱立しているようにも見える。それぞれの関連も乏しい。

もはや、プログラムをたくさん用意したから「あとはよしなに」では済まされない段階に来ている。とはいえ、出展各社にも「狙い」があるため、コンセプトを持ち出して出展各社の「表現」に規制を加えるのは現実的ではないだろう。

となれば、やはり主催者側が「物語」を提示してあげるのが良いと思うが、どうだろうか。

■文・撮影/佐々木広人

※CP+2026のトークステージのレビューは下記の記事をご覧ください。

About the Author

Hiroto Sasaki
アサヒカメラ元編集長(2014〜2019年)。
その後、WEBマーケティング企業などを経て、現在は大学で視覚表現論の講師も務める。
日本写真協会、デジタルアーカイブ学会所属。
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