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写真の今がわかるWeb情報マガジン

LUMIX Creative Photo Style | 田口るり子

「 SHOWCASE 」

グレー部分の階調感が心地いい
モノクロ作品に新しい方向性を示してくれる

 モノクロ作品を数多く世に送り出している写真家の田口るり子氏。その独創的な視点と世界観は、見る人を魅了する。そんな田口氏にパナソニックのLUMIX S5に搭載されているフォトスタイル「L.モノクロームS」の印象を聞いた。
「階調感をしっかり感じるモノクロ系フォトスタイルだと感じました。中間のグレー階調が豊かなので、モノクロ表現に幅がでます。白と黒は相反する色だからこそ、その『間』が重要になります。その部分の表現力があるフォトスタイルですね。さらにヌケのいい優しい雰囲気のモノクロなので、作品に新しい可能性を見出してくれました。
 また、白飛びはしないのに黒潰れしない……。なんとも言えない絶妙な画づくりです。このフォトスタイルを作った人は、きっと写真がとても好きなんだろうな、と感じさせてくれるほどです。きちんと白と黒の『粒子』が残っていますね。正直、驚きでした。良き古き時代のネガフィルムで撮影したかのような懐かしさがあります。さらに、LUMIX S5に搭載されているフォトスタイルに共通することですが、デフォルトのまま使うのではなく、自分好みの設定を探り出す『楽しさ』がありました。フォトスタイル自体のパラメーターはかなり動かせます。また動かすとガラリと印象を大きく変えることができ、自分の色を見つけ出しやすいです。作品の印象や見せたい方向性に合わせて変えていくことで、完成度をより高めることができます。RAW形式というとても便利で融通の効くデータファイル形式が存在しますが、JPEG撮って出しでも自分のイメージをきちんと表現することは、より撮影スキルを上達させてくれます。このフォトスタイルを極めれば、きっとモノクロ写真の根っこの部分もわかるようになると思いますよ」
 そう話してくれた田口氏。「モノクロの名手」と言われる田口氏が納得できるほどの完成度の高さにパナソニックの本気度を感じる。設定次第で自分好みにできるフォトスタイルであることは、主導権が「撮り手」にあることを意味する。これは作家にとっては重要なことだ。

 LUMIX S5自体の印象についても、かなり好感が持てたという。
「今回使用したLUMIX S5は非常に使いやすいカメラでした。日頃はニコンの一眼レフカメラを使っているのですが、操作感が似ているのですんなりと使いこなせました。また、グリップが非常に握りやすいことに好感を持ちました。自然と手が吸い付くような握りやすさは、プロの道具として重要なポイントです。ボディーも小型かつ軽量だったこともあり、片手での撮影が可能であったり、その際の疲れも軽減されました。シャッターフィーリングもよく、小気味よく撮影できます。スペック表だけ見ると、スタンダードな仕様のフルサイズミラーレスカメラなのかなと思ったのですが、数字には現れない部分にこそ良さがあるミラーレスカメラです。
 これも数字には現れない部分ですが、充電器がかなり使いやすかったです。タイプCのUSBなので、携帯やパソコンなどと共用で使える点や、差し込み式なので無駄な動作がいらないのもいい。撮影しながら、モバイルバッテリーなどをつないで予備バッテリーを充電しておけるなど、野外での撮影時には重宝します。このカメラをどんなシーンで使うのかということを、よく考えて開発されていると感じました」

 優秀なフォトスタイルを活用するためのカメラボディー自体が使いやすいことは、極めて重要だ。どれほどいいフォトスタイルも、カメラとしての基本性能や使いやすさが損なわれているようでは生かしきれない。ポテンシャルが高いLUMIX S5だからこそ生きてくるのだ。また田口氏は、純正レンズの高い光学性能についても触れている。
「今回の撮影では、LUMIX S PRO 24-70mm F2.8を使用したのですが、どの焦点距離でも十分な解像感が得られることに驚きました。この手のズームレンズは、どこかの焦点距離は解像感が足りなかったり、描写が甘くなりがちです。ですが、このレンズに関しては全域で高い解像感が得られ、周辺光量落ちもありません。またボケ感が自然なのにも関わらず、どこか深みがあることで立体感を非常に感じました。開放値がf2.8ですが、もっと明るいf値なのではないかと疑うほどです。これだけ完成度が高いと、別途単焦点レンズを購入する必要を感じないのではないでしょうか(笑)。また24-70mm f2.8のレンズとしては、比較的コンパクトです。LUMIX S5と組み合わせて使いましたが、特段重いとは感じませんでした。細部までしっかりと描写してくれる持っておきたい1本になると思います」
 バランスのいいカメラシステムだからこそ、スチルでも動画でも作品の表現力を上げることができるのだと気付かされる。そういうカメラは初心者が使っても上達が早いもの。これからフルサイズミラーレスカメラを手に入れたい人にこそLUMIX S5をすすめたい。 

■撮影/田口るり子 文/大貝篤史 モデル/近藤彩香