orphotograph

写真の今がわかるWeb情報マガジン

「フィルムカメラ」で今、日常を撮る

約9分
LEITZ Minolta CL・業務用フィルムISO100
LEITZ Minolta CL・KODAK 200 GOLD

フィルム写真は原点回帰ではなく、新しい表現

 若い世代の間で定着してきた「フィルム撮影」。あえてデジタルカメラではなく、フィルカメラを使って日常的に撮影を楽しんでいる。一時のブームで終わるのか……と思ったが、着実にカメラの「新しい」楽しみ方としての地位を獲得した。

 フィルムカメラブームを支えているのは、カメラ本体の価格の安さだ。高級コンデジといわれるプレミアがついたカメラはさておき、通常のフィルムカメラ(コンパクト、一眼レフカメラなど)なら中古価格で、4~8万程度で手に入る。程度のいい安いカメラを見つける楽しみもあり、中古カメラ屋にいくと20代の男女も見かけるようになった。話しかけると、彼らにはフィルムカメラのほうが「手軽」だという。筆者の世代だとデジタルカメラのほうがよほど手軽に感じるのだが、若い世代にとってフィルムカメラは「パッと」使うには丁度いいのだ。

 よくよく考えてみれば、フィルムカメラと一概に言ってもピンキリ…。デジタルカメラよりもむしろオリジナリティーのあるものが豊富にある。インスタントカメラ「写ルンです」のような使い捨てカメラから、中判や二眼レフなど本格的なラージフォーマットなカメラまで個性豊かなものがたくさんある。もちろんフィルムカメラは「それだけ」では撮れない。フィルムを入れる必要があるからだ。このフィルムにもたくさんの種類があり、人気なのはKodak系のフィルムだそう。特にポートラの人気は高く、著名な広告写真家がこぞって使っていることも要因のようだ。

 そう考えると、ボディー(レンズ交換式なら)×レンズ×フィルムという3つの要素を組み合わせることで、煩わしいデジタル現像処理をしなくても、自分らしい色味を見つけることができる。そういう道具として使い込む面白さをフィルムカメラには感じるのだと話してくれた。今の若い世代のほうが、写真の楽しみ方をよくわかっているのではないかと思わずにはいられない。

 フィルムカメラで撮影されたフィルムの現像は、カメラのキタムラコイデカメラなどで現像することが可能だ。その際に、そのまま「デジタル化」してスマホに転送してくれるサービスもあり、そのまま簡単にSNSへ写真をアップできる。そういうサービスの充実がさらにフィルムカメラの手軽さを後押ししている。お店の方に話を聞くと、フィルム自体を処分する人が多いらしい。ぜひ、フィルムも回収して保管してほしい。フィルムさえあれば何十年後でも復元が可能だからだ。デジタルの場合には、思わぬアクシデントですべて消えてしまうかもしれない。しかしフィルムカメラで撮影していれば、また写真屋さんに持っていけば、現像してくれるのだ。

今から始めるフィルム入門におすすめカメラ

 スマフォのカメラに飽きてしまい、もっと自分らしい写真を撮ってみたい、特別な瞬間を特別なカメラで納めたい。そんな風に思っている人におすすめなフィルムカメラとはどんなカメラなのか。

 カメラの知識がそれほどなくてもしっかりと撮れるカメラ…。それはビギナーにとって重要なポイントだろう。筆者がおすすめするのはズバリ、コンパクトフィルムカメラだ。カメラ本体は非常に小さく、バッグやポケットに忍ばせておくことができる。筆者にも経験があるのだが、どんなに高性能なカメラでも大きくてかさばるカメラは結局持ち歩かない。そうなると、どんどん撮影する機会は減っていき、最後は「高級ぶんちん」になってしまう。ビギナーほどスマホを持ち歩くような感覚で日常的に持ち歩けるモデルがいい。また、たいがいのコンパクトカメラには「オートフォーカス」が付いている。これはかなり重要で、気軽に「パシャ」と撮るには必須だと思っていい。重要なのはシャッターボタンを押すだけでちゃんと写ることだ。現在、中古で手に入るコンパクトフィルムカメラはまだまだ豊富に出ており、マップカメラやカメラのキタムラなどのネット販売でも在庫をたくさん保有している。もちろん、最初は店頭に足を運んで実物を見ながら選んでほしいが、遠方に住んでいたり、このご時世であれば信頼できるネットショップで購入するのはありだ。

 コンパクトカメラでおすすめなのは、値段的にも手ごろなニコンの35Tiだ。中古市場でもまだまだ在庫はあるし、大事に使われているので程度がいいものがそろっている。ストロボも内蔵しているし、AFも比較的合いやすい。絞り値や露出も自分で決めることができるため、思っている写真が撮りやすい。レンズに関してもスナップや旅行、ポートレートまで幅広く対応できる35mmレンズを搭載。単焦点ならではのやわらかいボケ味を堪能できるだろう。さらに軽量でスマホライクに写真が撮りたいのであれば、富士フイルムのナチュラクラシカがいい。小型かつ軽量で、それでいてズームレンズが搭載されている。広角側は開放値がf2.8と明るいため、暗めの室内などでもブレのない撮影ができる。まさに「旅のお供に……」なカメラなのだ。

Nikon35Tiと富士フイルムのナチュラクラシカ
Nikon 35Tiと富士フイルムのナチュラクラシカ
Nikon 35Tiの画像です
明るめの単焦点レンズが内蔵されている。非常に質感のあるコンパクトカメラだ
Nikon 35Tiの画像です
挿入されているフィルムを確認できる窓が付いているモデルがおすすめだ

レンズ交換式は撮影する難しさと楽しさを教えてくれる

 コンパクトカメラで、なんとなくフィルムの楽しさを理解したら、ぜひレンズ交換式カメラをおすすめしたい。最大のメリットはレンズを交換することで、作品性の高い写真も撮ることができるし、レンズによっては写真の写りが変わり、バリエーションを付けることが可能だ。さらに、オールドレンズを集めるという楽しさもあり、俗に言う「レンズ沼」というものにどっぷりはまることもできる(笑)。一つのカメラでいろいろな写真表現を実現してくれるのは、金銭的にもリーズナブルだし、なによりも自分自身が「撮っている」という実感を得ることができる。最近のデジタルカメラはよくできている。ドラえもんでいうところの「できすぎ君」なのだ。ドジな「のび太君」のほうがなんとなく主役になれ、しずかちゃんにも愛される……。その世界観がまさにレンズ交換式フィルムカメラだ。

 筆者が持っている「LEITZ Minolta CL」はおすすめ。ある意味、フルマニュアルなカメラだが、撮っているという実感がビシビシと味わえるカメラだ。フォーカスはマニュアルで、レンジファインダー方式を採用。ファインダー内に見える二重像を重ね合わせることで、ピントを調整するタイプだ。このカメラはファインダーが非常に見やすいため、初心者でも比較的合わせやすい部類に入る。シャッタースピードも1/1000秒まで切ることができるため、明るめのレンズを装着していても、絞り開放でのボケ感のある撮影が気軽に楽しめる。

 また、レンズマウント部はライカのMマウントと共用なので、現在でも多数の新品レンズを装着することができる。オールドレンズで楽しむのもあり、光学性能が高い現代レンズで楽しむもよし、選択枠はまさに無限大だ。ただ気を付けた方がいいのは、挿入しているフィルムが何なのか、「確認窓」がないためわからなくなりがちだ。しかし、そういった不便な点を除けば、カメラで写真を撮るという基本的なノウハウをこのカメラですべて学べると感じるほどで、まさに「スキルを上達させてくれるカメラ」だろう。

 また、ニコンのF100やF6のような一眼レフカメラがある。カメラ本体はかなり大きいが、プロでも使っているほどの高性能ぶりは写真自体のクオリティーをさらに一段押し上げてくれる。AF性能も非常によく、狙ったところにしっかりと合わせてくれる。最新のミラーレスカメラと比べれば劣るが、前述するように緻密なピントをしっかりと合わすことができるフィルムカメラは非常に少なく、作品撮りをフィルムでやりたいと思っている気合の入った人ならデジタルライクに使えるため、おすすめできる。

 F100やF6であれば、レンズもデジタル一眼レフカメラ用をそのまま使用できるため、豊富なニッコールレンズが使えるのだ。

LEITZ Minolta CL
LEITZ Minolta CL
LEITZ Minolta CL
メカメカしいこのフォルムが大好きである
Nikon F100
NikonのF100は非常に使いやすいコンパクトボディー。上位モデルとそん色ない性能もうれしい
Nikon F100
現行のデジタル一眼レフカメラと操作感はそれほど変わらない

自分の撮影スタイルに合わせたカメラを選ぶ

 生産が終了しているモデルがほとんどだとは言え、フィルムカメラはまだまだ遊べる「趣味」として楽しんでいけるだろう。若い世代がなぜ今フィルムなのか……。それはきっとデジタルの「すごくよく写る写真」に飽きてしまったのかもしれない。筆者はクルマが非常に好きで、今でも15年前のマニュアル車に乗っている。イージーに運転できるATモデルに乗らない理由は、「不自由なのが楽しい」からだ。不自由だからこそ自分で考える。うまくいかないから、何度もトライする。何度もトライするから、アイテムに愛着が沸く。そんな当たり前の「方程式」が今のデジタルカメラにはないのだろう。だからこそデジタルでも不自由が味わえるライカ社のカメラを求める若者が多いのではないか。

 人間は「使いこなす」ことを本能的に欲している。それは原始時代からツール(道具)をより使いやすく改良し、そしてそれなりに結果を得ることができる。そこに喜びを感じてきた。カメラもまったく同じで、不自由なフィルムカメラをもっと便利にしようと改良し続けた結果が、今のデジタルカメラなのだろう。ただ、あまりにも便利にしすぎると、あやつる楽しさや苦労を感じることができず、そのせいで「執着心」はなくなり、結果個性が失われていく。もしそうだとしたら、あまりにもつまらないじゃないか。メーカーにお願いしたいのは、今フィルムカメラに興味を持っている若い世代が次にステップアップするための「不自由なデジタルカメラ」を作ってほしい。それはきっと世界中から絶賛されるに違いない。

 次回アップ時には、実際にフィルムで日常を撮影している若者世代の声をお届けしたい。

LEITZ Minolta CLで撮影されたポートレート写真
LEITZ Minolta CL・富士フイルム業務用ISO100

●フィルムカメラ選びのポイントはコレ!

・初心者なら、まずAFが使えるコンパクトカメラから!
・シャッタースピードは1/500秒以上のモデルを購入するべし!
・最初から程度がいいものか、点検済みのものを購入する
・ステップアップなら現行レンズが使えるレンズ交換式がいい
・露出計が壊れているものがあるので、別途用意してほしい
・現像後のネガフィルムはしっかり保管しておく

■文・撮影/大貝篤史 ■モデル協力/Sayumi

■女子ポートレート写真なら「JAPAN GIRLS FACE」でチェック!
https://orphotograph.com/jgf/