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マクロレンズ2本でポートレートのバリエーションが広がっていく

約6分
NIKKOR Z MC 50mm f/2.8で撮影されたポートレート写真です

撮り手の想像力を掻き立ててくれる

 2018年11月から発売したニコンのフルサイズミラーレスカメラ「Z」シリーズ。発売当初は純正レンズの拡充がどこまでされるのか不安視する声があったが、約3年で18本の純正レンズが発売されている。驚異的なスピードで増え続けているZマウントレンズ。
 今回発売されたNIKKOR Z MC 50mm f/2.8とNIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sは、どちらもZマウント初の「マイクロレンズ」だ。ニコンは厳密な言い方にこだわっているため、通称「マクロレンズ」と言われているものを「マイクロレンズ」と表記している。本来マクロレンズとは原寸大以上の倍率が得られる顕微鏡のような拡大光学系のレンズのことを指すとし、呼び方を差別化している。こういう「こだわり」が何となくニコンらしく個人的には好感が持てる。※この記事では「マクロレンズ」とする

 NIKKOR Z MC 50mm f/2.8は、焦点距離が50mmということもあり、マクロ撮影からポートレート、スナップ、テーブルフォトまで幅広いジャンルの被写体に対応。標準単焦点レンズとして気軽に使うことができる。でも、そこはマクロレンズ。最短撮影距離は0.16mとかなり短く、ワーキングディスタンス(レンズ前玉から被写体までの距離)は約5cmと花弁や小さな昆虫などに寄った撮影が可能だ。開放値はf2.8と明るく、被写体と近接したポートレートに使いたいレンズだ。レンズ筐体は非常に小型かつ軽量で、Nikon Z 6Ⅱとの組み合わせでもバランスがとてもいい。マクロレンズらしく、フォーカス制限切り換えスイッチが付いており、全域(FULL)と0.3m-0.16mの2種類が選べ、近接撮影時には重宝する機能だろう。

Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 50mm f/2.8・f2.8・ISO6400
Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 50mm f/2.8・f2.8・ISO6400
Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 50mm f/2.8・f3.2・ISO10000

 次に、NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sは「S-Lineレンズ」ということもあり、徹底した色収差の抑制を実現。絞り開放でも周辺まで解像感の高い描写が可能だ。開放値からコントラストもしっかり描けるが、すごく「堅い」というわけではなく、優しいボケ味なのでポートレートに最適だと感じた。特に前ボケに関しては非常に美しく、積極的にボカしていきたい中望遠マクロレンズだ。前玉部分には、ニコン独自の反射防止コーティング「ナノクリスタルコート」と「アルネオコート」の両方が施され、あらゆる入射角の光源でもゴーストおよびフレアを効果的に低減してくれる。
 NIKKOR Z MC 50mm f/2.8同様に「フォーカス制限切り換えスイッチ」を搭載。全域(FULL)と0.5m-0.29mの2種類からAF可動域を選べる。最短撮影距離は0.29mと非常に短く、開放値で撮影することで、強烈なボケ感を生み出すことができる。中望遠らしい背景の圧縮効果を生かした撮影で、ダイナミックな奥行き感のある撮影が可能なのがいい。
 また、光学式手ブレ補正機構(VR)を搭載することで、約4.5段の手ブレ補正効果を実現。手ブレの影響を受けやすい中望遠レンズだからこそ強力な「武器」になる機能だ。Zシリーズのカメラボディーと組み合わせることで、5軸方向のブレをしっかりと抑制する。

Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S・f7.1・ISO6400
Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S・f2.8・ISO6400
Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S・f3・ISO6400
Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S・f3.2・ISO6400

美しいボケ味が魅力のポートレートレンズ

 今回は、この2本のレンズを使って暗所でのポートレート撮影を実施したが、共通して言えたのは、「玉ボケ」の美しさだろう。開放値でも嫌味のないきれいな丸ボケでありながらも、絞り込むことでより解像感のあるしっかりとした玉ボケになっていく。玉ボケ内部の濁りは少なく、非常にクリアで美しいボケ感だ。
 部屋のライトを完全に消した状態での撮影だったため、フォーカスはマニュアルフォーカスにすることが多かったが、どちらのレンズもフォーカスリングに心地よい粘りがあり、とても使いやすい印象を受けた。ヌルっとした動きのおかげで微調整も非常にしやすく、狙った部分にしっかりとピントをもっていくことができる。特に、NIKKOR Z MC 50mm f/2.8は50mmという画角なため、使い方の汎用性が高く、自分が積極的に動くことで、約5cmから無限遠まで、自分のイメージに合った構図を意志を持って具現化してくれる。その懐の深さが作品のクオリティーを数段上げてくれるだろう。そして、Nikon Z 6Ⅱのような高感度耐性が優れたボディーと組み合わせることで、自分が見たままのイメージを具現化した「暗所ポートレート」が気軽に撮れる時代が来たことに、心から喜びを感じる。そういったボディー側の性能の進化があるからこそ、「マクロレンズだから、僕(私)には関係ないかも……」ではなく、標準単焦点レンズを1本追加で購入する意識で買えるレンズであることは間違いない。NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sに関しては、日頃から85mmや135mm程度の中望遠単焦点レンズを愛用している人であれば、なんの違和感もなくポートレート撮影でガンガン使っていける。ニコン Zマウントの純正レンズに135mmの単焦点レンズはないので、その代わりとして積極的に選べるレンズだ。

Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 50mm f/2.8・f3.2・ISO10000
Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 50mm f/2.8・f4・ISO10000
Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 50mm f/2.8・f4.8・ISO10000
Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 50mm f/2.8・f3.8・ISO10000
Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 50mm f/2.8・f3.2・ISO6400

Nikon Z 6II + NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S・f2.8・ISO6400


■文・撮影/大貝篤史 ■モデル/AYAME

■NIKKOR Z MC 50mm f/2.8
https://www.nikon-image.com/products/nikkor/zmount/nikkor_z_mc_50mm_f28/

■NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
https://www.nikon-image.com/products/nikkor/zmount/nikkor_z_mc_105mm_f28_vr_s/

https://orphotograph.com/2020/11/12/nikon-z-6ii-shooting-report