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FUJIFILM X100VI SHOOTING REPORT

約5分

富士フイルムから満を期して発売された高級コンパクトデジタルカメラ「X100VI」。初代機であるX100が発売したのが2011年。細かいデザインの変更はあるにしても、ほぼそのデザインコンセプトは大きく変わることなく、今に引き継がれている。コンパクトデジタルカメラ(以下、コンデジ)にしてはやや高めのお値段だったX100。それでも、最新ミラーレスカメラに引けを取らない性能から多くのプロカメラマンから支持を受けた。

あれから13年だが、X100VIの魅力とコンセプトは初代機からしっかりと引き継がれ、継承されている。センサーに関してはX-T5シリーズと同等の約4020万画素の裏面照射型COMSセンサー「X-Trans CMOS 5 HR」を採用。エンジンは「X-Processor 5」を搭載し、上位モデルと比べても遜色のない心臓部だ。

ファインダーに関しても光学式と電子式を切り替えることができる独自の「ハイブリッドビューファインダー」を採用し、カメラとしての意義でもある「ファインダーをのぞく」という非日常体験をオーナーに提供してくれる。このファインダーが非常に優れていて、光学ファインダーにもAFポイントが白枠でしっかりと表示される。AFポイントの微妙なズレはエレクトロニック・レンジファインダーを使うことで確認できる。また、AFではなくMFで楽しみたいというユーザーにとっても、エレクトロニック・レンジファインダーは非常に使える。

カメラとしての基本性能はさることながら、X100VIの魅力は操作性にもある。物理ボタンやダイヤルが多く、直感的に操作したい設定を瞬時に変更することができる。ISO、シャッタースピード、露出、絞り値など写真を撮るうえで重要な項目はほぼ物理ダイヤルで変更可能だ。こういうカメラを手にすると、写真をゆっくりじっくり撮りたくなる。最近のミラーレスカメラは、非常に良くできていて、瞬発力のあるカメラだ。もちろん、X100VIもそうなのだが、他のカメラと違って「肩肘張らずに」撮影したくなる。そういうカメラは少なくなっているから、貴重だ。

FUJIFILM X100VI 1/420秒・f5.6・ISO125・クラシックネガ

レビューでは、スナップやポートレートなど撮影してみたが、まさに「軽快」という言葉が当てはまるカメラだ。もともと軽量かつコンパクトなボディーであるため、長時間首からぶら下げていても疲労感はほぼない。35mm判換算で35mm相当のレンズは、フィールド利用では使いやすい画角だ。特に「日常感」を感じる写真を撮りたいという20代、30代の若い女性にはおすすめ。小さくて軽いし、デザインもいい。友人との旅行やぶらり散歩には最適だろう。AF性能も非常によく、自分自身も動きながら撮影するシーンでも扱いやすかった。

FUJIFILM X100VI 1/2000秒・f2・ISO125・クラシックネガ(上・下)

FUJIFILM X100VI 1/110秒・f2・ISO125・アクロス(上)
FUJIFILM X100VI 1/55秒・f2・ISO640・クラシックネガ(下)

X100VIからシリーズ初のボディー内5軸手ブレ補正機構が搭載。約6段相当の手ブレ補正性能を有している。この効果は絶大で、今までのX100シリーズで気になっていたシャッタースピードが稼げないようなシーンでもラフに扱えるようになった。撮影の合間に動画も少し試してみたが、今までだとハンディージンバルは必須だったが、ジンバル歩きがある程度できるヒトなら、揺れの少ない動画が手持ちでも撮影できそうだ。また、こういうカメラはワンハンドでの撮影が多いが、そんなときにもボディー内手ブレ補正機構があることで、安心感がある。

FUJIFILM X100VI 1/38秒・f5.6・ISO125・アクロス(上)
FUJIFILM X100VI 1/2000秒・f2・ISO125・クラシックネガ(下)

レンズは35mm判換算で35mm。開放値はf2と明るい。X100Vで大幅に光学性能が上がったので、そのまま継承している。f2と明るいため、スナップポートレートなどにも積極的に使いたくなる仕様だ。作例のように被写体に寄ることで、ボケ感のある撮影ができる。立体感と奥行き感のある写真を撮ることができるため、表現の幅は広がる。f4程度まで絞り込むことで、周辺までしっかりと解像感が出てくる。風景などにも十分に使えるポテンシャルがある。コンデジに付いているレンズとは思えないほどクオリティーが高い。

FUJIFILM X100VI 1/34秒・f2・ISO200・クラシックネガ

富士フイルムのカメラには「フィルムシミュレーション」という機能がある。年々増えていて現在は20種類になっている。フィルムを出し続けているメーカーだからこそできる機能なのだが、こういう機能がボディーデザインと共存できているところがX100VIのすごいところであり、魅力の一端だ。機能とデザイン。この2つが揃っていて、だからこそ完成度の高いカメラになる。まさにヘリテージとはこういうカメラのことを言うのだろう。撮り手の気分をあげてくれるカメラ。富士フイルム90周年にふさわしいカメラだ。

モデル/RIHO

■富士フイルムX100VI
https://fujifilm-x.com/ja-jp/products/cameras/x100vi