
ポートレートシーンで
使い分ける単焦点レンズ
-Magazine-
感情の距離を写す。それぞれの焦点距離の使い方
ポートレートを愛するすべての人にとっての永遠の悩みはどの焦点距離のレンズを使うかだ。もちろん、ポートレート撮影に有効とされるのはズームレンズだが、ここでは「単焦点好き」を想定としている。ズームレンズの「利便性」も捨てがたいけれど、単焦点レンズが持つ「潔さ」と「圧倒的な描写力」は、一度知ってしまうともう戻れない(笑)。
今回は、ポートレート撮影でよく使われる3本、35mm、50mm、85mmの使い分けについて注目してみる。
その人の「日常」を飲み込む35mmレンズ
35mmという焦点距離は、被写体との「温度感」を写し出すのに最適なレンズ。
35mmは一般的に広角レンズの部類に入るが、不自然な歪みが少なく、モデルと会話をしながら、お互いの存在感を感じながら撮れるのが最大の魅力。被写体だけを切り取るのではなく、その人がそこに存在している「理由(背景)」まで写し込ませることができるのがいい。



・「環境ポートレート」としての完成形
画角を広く取れるので、被写体と一緒にいる場所の情報やロケ地の雰囲気を感じやすく、背景の海、草原、喧騒とした街角などなど、35mmは、モデルとその後ろに広がる世界を対等に取り扱えるレンズ。



・物理的な距離が縮まる「ちょうどいい」焦点距離
このレンズで寄って撮るということは、モデルのパーソナルスペースに一歩踏み込むということ。その緊張感と親密さが、写真に「生っぽい」ライブ感を付加してくれる。


| orphoto’s Point: 35mmで撮るときは、あえて「余白」を意識してほしい。モデルを画面の端に置いても、 広角特有のパース(遠近感)が物語をドラマチックに演出してくれるはず。 |
背伸びしない、ありのままの「真実」を写し出す
「標準レンズ」と呼ばれる50mmは、人間が何かに集中して見つめている時の視野に近いと言われている。だからこそ、50mmで撮られた写真は、見る人に「安心感」と「誠実さ」を与えてくれる。


フォトグラファーの間でも「50mmを使いこなせれば一人前」と言われるほど奥が深い距離。なぜなら、35mmのような広い情報の援護射撃も、85mmのようなとろけるボケ感も、50mmは「ほどほど」にしか感じることができず、ポートレート撮影においては「平均化」する焦点距離と言われている。それを使いこなして一人前という裏返しだ。
* 嘘をつけない、ストレートな描写
モデルの等身大の美しさを引き出すなら、50mmが一番。歪みが少なく、目で見ている感覚に近いため、ファッション誌のポートレートや、飾らない日常の記録に最適できる。


* フットワークが写真を変える
寄ればバストアップ、引けば全身。自分の足で動くことで、一つのレンズから無限のバリエーションが生まれる。


| orphoto’s Point: 50mmは、光の質に最も敏感なレンズ。光と影のコントラストを意識するだけで、 何気ないポートレートがハッとするほど芸術的な一枚に変わる使いこなす楽しみがあるレンズ。 |
日常を「憧れ」に変える美しき断絶と圧倒体なボケ味
その圧倒的なボケ感とそこから来る立体感が「非日常的」な一枚にしてくれる写真を撮れるのが85mmの特長。特に開放値F1.4クラスを使用することで、唯一無二と思えるほどの強烈な立体感が得られるレンズ。いつもとは違う「特別な空間」を切り取りたいなら、迷わず85mmを手にするのがいい。

85mmは「引き算のレンズ」と言われている。中望遠特有の圧縮効果と、開放F値の明るさが生み出すとろけるようなボケ感。これらは、日常に溢れるノイズを削ぎ落とし、背景の整理がしやすい。
・「非日常」を演出できるレンズ
瞳にピントを合わせ、背景をボカす。ただそれだけで、モデルの肌の質感、まつ毛の一本一本が際立ち、まるで映画のワンシーンのような高揚感を手に入れることができる。



・心理的なプロテクト
85mmを使うと、モデルとは数メートル離れることになる。この距離が、逆にモデルを安心させ、カメラを意識しすぎない「素」の表情や、どこか遠くを見つめるアンニュイな表情を引き出してくれる。

| orphoto’s Point: 背景を完全にボカすだけでなく、あえて「前ボケ」を作ってみる。花や葉越しに85mmで狙うと、幻想的で奥行きのある、エモーショナルな世界観が完成する。 |
最後に。レンズ選びの一番の秘訣は「心の距離」だと思うこと。
被写体との心の距離をレンズの焦点距離で選んでいく。そうすることで、写真作品にバリエーションが出てくるうえに、撮り手と被写体のふたりだけが醸し出せる「唯一の写真」を撮ることができるだろう。またこの3本のレンズを揃えることで、ポートレート撮影は一通り撮ることができる。そこをしっかりと使いこなす事ができるようになったら、24mmや135mmなど枠を広げていくことで、機材の充実度も上がっていく。その日の光、その場の風、そして何より、自分自身が被写体に対してどう動いているか…。その「心の焦点距離」にぴったりの一本を選び出せる「チカラと経験」を養うことが重要だ。
■文/orphotograph編集チーム ■写真協力/AO ■モデル協力/Miku Onodera,Nana,Sakurako,doyon,Megumu
■お役立ち情報■
ニコン「NICO STOP」 https://nij.nikon.com/nicostop/
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