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SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN |Contemporary REPORT

約6分

フィールド撮影に最適なサイズ感と使い勝手がいい

 SIGMAから今回発表されたのは、28-70mm F2.8 DG DN |Contemporary(Lマウント用)。24mmスタートではなく、28mmスタートだ。撮影を行う上でそれほど24mmではないことが気になるシーンは筆者の場合にはなかった。このレンズの最大の特長は、驚異的な小型かつ軽量された筐体だ。このレンズを箱から出したときに「SIGMAさん、間違えて違うレンズを送ってきたのかな…」と思うほど小さいのだ。しかし、筐体にはきちんと「28-70mm」とプリントされている。これはちょっとした珍事だ(笑)。想像しづらいかもしれないが、このサイズ感はF3.5-F5.6など暗めのキットレンズのようだ。開放値はf2.8通しと明るいのでハイアマチュアからプロユースでもバリバリ使えるレンズだ。
 先行発売している24-70mm F2.8 DG DN | Artをベースに設計されているというだけあって、写りに関しては非常にシャープだ。キレという意味では24-70mm F2.8 DG DN | Artのほうが少しいいように感じるが、作品を見てもらってもわかるように十分な解像感だ。ボディー側のデジタル補正とレンズ側の光学補正を「コラボ」することで、収差を徹底的に補正し、周辺までクリアな透明感のある描写が可能となっている。頑固にレンズ設計のみで収差抑えるのも魅力的だが、携帯性がスポイルされては、ユーザー側としてやや魅力が落ちる。こういう潔さが出ているこのレンズには、SIGMAという会社のフレキシブルさが表れている(笑)。

Panasonic LUMIX S5 + SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN |Contemporary・f2.8(上)
Panasonic LUMIX S5 + SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN |Contemporary・f2.8(下)

ポートレート撮影に最適なズームレンズ

 ポートレート撮影においてのアドバンテージは、やはりf2.8の「明るさ」だろう。フルサイズセンサー搭載のミラーレスカメラ対応ということで、装着した場合のボケ感はかなり大きい。開放値で使用することで、適度なボケ感が得られるので、あっさりとしたまとまりのいい画を撮影することが可能だ。もちろん、被写体が浮き出ているような被写界深度が浅い画を撮りたいのであれば、迷わず中望遠のf1.4クラスの単焦点レンズをおすすめする。しかし、このレンズの良さはその取り回しの良さと携帯性の高さだ。
 撮影地は雪だったので、気温自体は2℃程度の屋外。そんな中、モタモタしていると、モデルの体力がどんどんと失われていく。ポートレート撮影においてモデルの表情や動きは、非常に重要なポイントだ。単焦点レンズの場合には、撮りたい画によって、レンズを交換する必要がでてくることで、ややオペレーションに時間がかかる。しかしズームレンズである28-70mm F2.8 DG DN |Contemporaryであれば、レンズ交換の時間を短縮することができる。さらに、何度も言うが、このレンズの最大の魅力はコンパクトさにある。このサイズ感なら、装着した状態のカメラを片手でブンブン振り回しながら撮影可能。カメラ側のボディー内手ブレ補正機構がきちんと効く機種を使えば、なおさらだ。いざというときには、アウターのポケットに収納しておける。
 今回はパナソニックのLUMIX S5に装着した状態ですべて撮影したが、小気味いい撮影ができた。1本で広角から中望遠域までカバーしているので、自分さえしっかりと動けばイメージ通りの画を撮ることができる。そういう意味では、ビギナーやミドルクラスのユーザーにおすすめしたい1本だ。ただし、このレンズを最初に購入すると、他のレンズを買わなくなりそうな予感がしてならない……(笑)。それほど写りが素直なのだ。24-70mm F2.8 DG DN | Artと比べると、完全な防滴防塵仕様ではなかったり、AFLボタンや、ズームロックスイッチがないなどやや簡易的な仕様になっている。これは小型化のためには必要な「勇気ある決断」だったのかもしれない。そういう装備や機能が必要だという人は、「Artライン」の方を購入することをおすすめする。要は、自分の撮影スタイルにどちらが当てはまるのかだ。筆者は大雨や大雪、そして滝のそばなどで撮影することは、ほとんどない。海際での撮影は多いが、そもそも海の場合には塩害などもあり、どちらのレンズを購入しようとも対応していないし、撮影後のメンテナンス次第で長持ちさせることができる。ズームロックスイッチに関しても、自然に前玉が伸びてくるようなことは今のところ一度もない。すべてのユーザーに必ずしも必要ではない部分は省くことで、「得られたもの」の方が多いという印象だ。定番の焦点距離のズームレンズだからこそ、自分の撮影場所やスタイルに合わせて購入したいレンズだ。このレンズでも十分だという人は多いだろう。

Panasonic LUMIX S5 + SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN |Contemporary・f2.8(上)
Panasonic LUMIX S5 + SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN |Contemporary・f2.8(下)

動画撮影での仕様をかなり意識しているレンズ

 また、このレンズを装着したSIGMAのフルサイズミラーレスカメラ「fp」は1kgを切る。このことは、動画撮影時において重要なポイントになる。なぜならボディーとレンズの組み合わせで1kgを切るなら、高額なジンバルを購入せずとも、比較的安価なジンバルでも対応できる重さだからだ。VlogやYouTube撮影をだれでもできる時代だからこそ、ジンバルを装着してワンランク上の撮影を行いたいと思う人は多いだろう。そのときにコンパクトなジンバルと組み合わせることができれば、快適な動画撮影ができる。レンズとボディーの前後バランスがいいとジンバルのバランス調整もしやすい。スチルだけではなく、動画も撮りたいという人なら「買って損はない」レンズだろう。

撮影・文/大貝篤史 モデル/COCORO

Panasonic LUMIX S5 + SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN |Contemporary・f2.8


■SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN |Contemporary
https://www.sigma-global.com/jp/lenses/c021_28_70_28/

■Panasonic LUMIX S5
https://panasonic.jp/dc/products/s_series/s5.html

シグマ Iシリーズの記事はコチラ↓
https://orphotograph.com/2021/01/06/sigma-i-series-shooting-report/