20mmという超広角がこのサイズ感で手に入る
今回、シグマから発表されたレンズ「SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary」は、超広角ながらも「手のひらサイズ」のコンパクト設計で、いつでも持ち出せる広角単焦点レンズだ。単焦点の広角レンズは概して大きく重いものが多いのだが、このレンズに関してはそのセオリーは当てはまらない。全長は約72mm、重さは約360g(❊Lマウント用)とかなり小型かつ軽量だ。Iシリーズ共通である質感の高い筐体とオールドレンズのように絞りリングが搭載されており、所有欲は否応なしに高くなる。レンズフードは「花形フード」を採用。フードも金属質で高級感がある。もちろん、標準装備だ。
開放値はf2と比較的明るい設定であり、風景写真からスナップ、ポートレートなど幅広いジャンルに対応できそうだ。描写性能に関しては、開放値から非常にシャープな画を叩き出すレンズで、ピント面から周辺面まで高い解像感を保持している。Iシリーズは開放値で少しオールドレンズのような甘さを感じる焦点距離のレンズもあるのだが、このレンズに関してはそういう印象はない。そういう意味では「現代レンズ」だとも言えるが、近接撮影を行った際の背景のボケ感はとても美しく、歪みを気にしないのであれば、ポートレートでも積極的に使っていけそうなレンズだ。
SIGMA fp L + SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary (上)
Leica CL + SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary (下)
ポートレートレンズとしても活躍できるボケ味
あいも変わらず作例はポートレート中心なのだが、この焦点距離での撮影の場合、かなり被写体に寄っていくシーンなどが想定され、h初見のモデルなどで使用するには少し気が引けるかもしれない(今回のモデルは初見なのだが……)。一方、周りの情報を広く入れる引き気味のポートレート撮影であれば、被写体とそれほど離れず撮影でき、コミュニケーションを取りながら撮ることができるメリットがある。
また、逆光耐性がとてもよく、嫌なフレアやゴーストはかなり抑制されている。ポートレート撮影のアクセントとして無理やり出すことはレンズの角度によっては可能だが、出たとしても素直なフレアなので、好感が持てる。簡易ではあるが、防塵防滴構造を採用しているため、日常的な使い方なら安心して使えるだろう。さらに過酷な条件下での使用なら、迷わずArtラインをおすすめする。
SIGMA fp L + SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary (上、下)
フルサイズ対応の明るいレンズであることの恩恵で、広角の割には非常にボケやすく、モデル撮影時の表現力は、撮影者のイメージ次第でかなり広がるだろう。ポートレート撮影での使用の場合、極端にモデルを隅に置かず、中央付近に置くのがポイントだ。今回の撮影では、シグマのfp LとライカのCLを持ち出して撮影したのだが、ライカのCLはAPS-Cサイズのセンサーを搭載しているので、35mm判換算で約30mmのレンズとなる。ボケ感は少し失われるが、非常に使いやすい焦点距離となり、スナップ的要素の強い撮影が行えるマルチレンズとして使うことが可能だ。さらに、Iシリーズはビルドクオリティーが高いため、ライカCLのボディーとも相性が抜群だ。
どちらのボディーで使用していてもAF性能は非常によく、合焦スピードもかなり速い。ステッピングモーターを搭載していることもあり、AFの駆動音もとても静かで動画撮影にも積極的に使っていけるレンズだ。LUMIX Sシリーズにはない焦点距離なので、重宝するだろう。
Leica CL + SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary (1枚目、2枚目)
SIGMA fp L + SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary (3枚目、4枚目)
Iシリーズ全般にいえるが、筐体に「絞りリング」が搭載されているのは筆者的には非常にありがたい。昔ながらの撮影が身に染み込んでいるため、ついついレンズ側で絞り値を変えたいと思ってしまうし、その行為自体がカッコイイと感じている。「カメラを操っている感」を撮影者が感じながら写真を撮ることはとても重要なことだ。シグマのIシリーズにはそういう「数値化」されない魅力がたくさん詰まっている。
文・撮影/大貝篤史 モデル/真僖祐梨
■SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary
https://www.sigma-global.com/jp/lenses/c022_20_2/