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Panasonic LUMIX S1 SHOOTING REPORT

約7分
Panasonic LUMIX S1 + LUMIX S PRO 50mm F1.4・1/1000秒・f1.4・ISO100・絞り優先モード

最後発だったからこそ熟成された完成度を感じる

2019年に発売されたパナソニックのLUMIX S1。筆者は発売日に購入して今もメインカメラとして使い続けている。発売当初は「でかい、重い」といろいろと言われたパナソニック初のフルサイズミラーレスカメラ。今となってはそれすらアドバンテージに感じる。
有効画素数約2400万画素のセンサーは非常に良質な色を描いてくれる。コンセプトが「生命力・生命美」というだけあって、フォトスタイルをスタンダード設定にしていると、非常に自然で嫌味のない色味で撮影できる。さらに有効画素数が少なく、センサーピッチが広いため、色調が豊かであり、さらに高感度撮影時のノイズもISO3200程度であれば許容範囲だ。数年間使ってみて感じるのは、「JPEG撮って出し」か「RAW現像処理での作品性重視」のどちらにしても扱いやすいカメラであること。まさにフルサイズミラーレスカメラの入門機としておすすめしたい。

Panasonic LUMIX S1 + LUMIX S PRO 50mm F1.4・1/5000秒・f1.4・ISO100・絞り優先モード

スチルカメラとしてのポテンシャルがとても高い

LUMIX S1の魅力の一つとしてまずEVFの見やすさを上げたい。約576万ドットの高解像度でありながらもフレームレートが120fpsと高速。アイポイントも約21㍉離れていることで、目を少し離しても四隅がしっかり見えるのもうれしい。その甲斐あって、非常に違和感のないファインダーで、長時間の撮影でも目が疲れない。さらに大型のアイカップなのでフィット感も高く、安定感も抜群なのだ。まさにファインダーをのぞきながら撮影するためのカメラだ。
操作性に関してもボタンの配置がよく、使用頻度の高いWB、ISO、露出の調整などノールックで瞬時に変更できる。さらに、ファンクションレバーが採用されているので、AFポイントの移動などがスムーズ。センターを押し込むことで瞬時に中央に戻せるのも粋な計らいだ。また、最近のカメラ?では珍しい「操作ロックレバー」が搭載。撮影中の誤動作でのミスも軽減してくれる。 そしてこのカメラの機能でもっとも使用頻度が高いのが「人体認識AF」だ。ポートレート撮影が多い筆者にとっては、いまや「必須機能」となっている。パナソニックの「人体認識」は他社と比べても非常に高い精度とレスポンスで合焦してくれる。正直、こういう機能は使わないと思っていたが、いざ使ってみるととても便利。そして、構図の自由度が大幅にアップするのだ。段階的に被写体の全身→顔→瞳の順にターゲットが絞られていくのだが、これが自分のイメージにドンピシャ。このAFであれば被写体に「もっと動いて!」と指示を出しながら自分も一緒に動き回り撮影が可能だ。そうすることで、より臨場感のある撮影ができる。もちろん、完璧ではないので、大幅に外すことがある。それでも使い続ける理由は「リカバーが早い」からだ。メーカーによっては、フォーカスを外してからリカバーが遅い場合がある。その点、このカメラであれば撮りたい瞬間をそれほど逃すことはない。さらに、ボディー内5軸手ブレ補正機構が搭載されていることで、カメラを振り回しながらの撮影でも、嫌なブレをしっかり抑制してくれる。撮る時の制限が少なくなれば、それこそ「自由」なのだ。カメラを握っていることをそれほど自分も被写体も意識しなくなり、自然な表情を狙っていける。

Panasonic LUMIX S1 + LUMIX S PRO 50mm F1.4・1/3200秒・f2.5・ISO100・絞り優先モード

Lマウントレンズは増え続けているので、プロユースにも十分対応できる

発売当初はやや不安だった「レンズの少なさ」も、ライカカメラ社とシグマとの「Lマウント三社アライアンス」のおかげで、使えるレンズが大幅に増えた。仕事などの撮影で使用するであろう焦点距離に関しては完全に揃っていると言っていいだろう。そんな中、純正のレンズを選ぶ理由とは?と思う人がいるだろう。同じ焦点距離であれば、ぜひパナソニック製レンズをおすすめする。その理由はAFの挙動だ。他社製レンズよりもあからさまにAFの駆動が速い。被写体にピントが合うまでのスピードが速く、ストレスのない撮影ができる。ただ純正レンズは比較的高価だ。そんな人におすすめなのが、LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.というレンズ。価格も比較的リーズナブで、使い勝手のいい高倍率ズームレンズでありながら、マクロ撮影も楽しめる優れもの。写りに関しても「PRO」シリーズ譲りの高解像度な撮影が可能だ。少し余裕があればLUMIX S PRO 50mm F1.4がおすすめ。筆者が一番使っているレンズだ。開放値から積極的に使っていけるほどボケ味がきれいで、ピント面に関してはかなりシャープ。非常に立体感のあるポートレート写真が撮れる。魅力的なLマントレンズは日々増え続けているので、これからもどんなレンズが出るのか楽しみだ。

Panasonic LUMIX S1 + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art・1/640秒・f1.4・ISO100・絞り優先モード

ムービーカメラとして購入するのもいいと感じるほどの充実ぶり

LUMIX GHシリーズを見てもわかるように、動画性能に関しても妥協のないプロユースを念頭においたシリーズがある。LUMIX S1に関しても同様で、かなりハイレベルの動画撮影ができるポテンシャルを秘めている。ビットレートが100Mbps以上の高ビットレートのMOV形式での撮影、別売りのアップグレードソフトウェアを適用することで、4:2:2 10bitのHDMI出力が可能。そして、業務用シネマカメラクラスの広いダイナミックレンジを可能にする「V-log」にも対応。後処理のカラーグレーディングにも十分に耐える良質なデータで撮影ができる。
これだけの高ビットデータだとかなり重いデータになり転送スピードが遅いとワークフローに支障がでるが、XQDカードおよびCF express(※ファームアップ必須)に対応しているため、パソコンへの転送スピードも速く、作業もしやすい。 上記で便利だと話した人体認識AFに関しても動画撮影中でも使えるので、シビアなフォーカス作業を行わなくてよく、動画への敷居が下がる。動画作品を作る上でフォーカス作業は大きな課題だ。特にワンマン撮影の場合には、注意を払うべきことが多いため、何かを「カメラまかせ」にできることで、ワンランク上の完成度を狙える。

超高機能なカメラを使いこなせるのかが、このカメラの「アキレス腱」

スチルカメラとしてもムービーカメラとしても死角が少ないカメラで、これから本格的に写真を楽しみたい人や映像作品を作り上げ、世に送り出していきたい人におすすめの一台だ。そしてこのカメラを使う際には「小型かつ軽量だからミラーレスカメラを選ぶ」という概念を捨て切る必要がある。それよりも、ミラーがないことの本来の恩恵に目を向け、いかにその恩恵を駆使して「いい写真」を撮るかということをイメージする。 フルサイズミラーレスカメラで高性能なレンズは、各社重くて大きい。であれば、撮影時のバランスなども考えると、ボディーはある程度大きくて重いほうがいいのだ。実際、筆者がLUMIX S1をメイン機で使用する理由はそこになる。バランスの良さは長時間の撮影でも疲れないうえ、安定感が上がるのでブレにくく、意図的にシャッタースピードを遅くしているシーンなどではむしろ重宝するぐらいだ。各社から「似たりよったり」のカメラが発売している。だからこそ自分に合った一台を見つけるのは「至難の業」だ。今、撮る側の「意思」が問われているのかもしれない。

Panasonic LUMIX S1 + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art・1/5000秒・f2.8・ISO100・絞り優先モード

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撮影・文/大貝篤史
モデル/加藤みゆ

■LUMIX S1 製品ページ https://panasonic.jp/dc/products/s_series/s1.html