たかが2mm、されど2mm
フィルムシミュレーションという富士フイルムならではの色表現とそのコンパクトかつ独創的なカメラデザインで若い層に人気のあるXシリーズ。「写真のクオリティーにセンサーサイズはまったく関係ない」と思わせてくれる色表現には独特な世界観があり、写欲を高めてくれる。
そんなXユーザーに待望の「真の50mm」が登場した。ここでいう真というのは、35mm判換算で50mmに該当する33mmという画角で登場したことを意味する。従来まではXシリーズが誕生した当初からラインナップされている「XF35mm F1.4 R」が富士フイルムの50mm扱いだった。33mmと35mmでは2mmしか変わらないのでは…という人はいるだろう。筆者が使ってみた感想は「たかが2mm、されど2mm」なのだ。実際に撮り比べてみて感じたのは、XF35mm F1.4 Rのほうがやはり少し窮屈感を感じる。XF33mm F1.4 R LM WRを使うと「ちょうどいい」安定の画角であることは明確だ。もちろん好き嫌いはあると思うので、使い手の意識によるところは大きいと思うが、スナップとポートレートが撮影のメインであるのなら、XF33mm F1.4 R LM WRの画角のほうが落ち着くだろう。
FUJIFILM X-E4 + XF33mm F1.4 R LM WR (上下ともに)
新しい選択肢が増えたことで広がる表現力
写りに関して比べると、明らかに解像感が違う。XF33mm F1.4 R LM WRは開放値からとても素直でシャープな写りなので、「え?同じボディー使って撮ったよね?」と思ってしまうほどだ。逆を言えばとてもすっきりとした写りなので人によっては物足りない……と思う人もいるだろう。そんなときこそ、XF35mm F1.4 Rがあるのだ。このレンズは開放値ではかなりゆるい写りをするので、まるで「オールドレンズ」で撮影したかのようになる。何度も言うがここは好みが分かれるところなので、好きとか嫌いの話をしたいわけではない。要は「撮る時に何を要求する」のかということだ。そして、富士フイルムはどちらの要求にもしっかりと応えることができるレンズを手にしたことを意味する。これは、写真を趣味にしている人や仕事としてバリバリ使っているプロユースにしても歓迎できる。XF33mm F1.4 R LM WRにはそういう「役割」があるのだ。
FUJIFILM X-E4 + XF33mm F1.4 R LM WR
もちろん、現代レンズらしく「防塵・防滴仕様」だし、「低温度耐性」もあることから、どんなシーンでも活躍できるレンズになっている。AF性能に関しても全群繰り出しタイプのXF35mm F1.4 Rより高速になっている。さらに駆動音に関してはかなり改善され、動画などのユースにも十分に使用可能だ。今回は室内での撮影をメインで使用してみたが、ポートレート撮影で積極的に使っていけるレンズだ。全体的にシャープな写りで細かいディテールがしっかりと表現できるのがすごい。開放値がf1.4なので、十分に明るく、背景をしっかりとぼかすことが可能だ。ボケ感はかなり素直で濁りのないきれいなボケ味で美しい。それでいて、全体的に芯のある感じが安心感を生み出してくれる。
FUJIFILM X-E4 + XF33mm F1.4 R LM WR (4枚ともに)
要は使い分けが重要なのだ
筐体に関しても全長が約73.5mmと程よい長さがあり、X-E4に装着するとやや大きく感じるが、X-T4に装着すると非常にバランスのいい「やる気」にさせてくれるシステム・フォルムだ。レンズ自体の質感もさすがの「富士フイルム」クオリティーで高級感のあるデザインなので所有欲をしっかりと満たしてくれる。
ただ気をつけたいことがある。このレンズを購入したらXF35mm F1.4 Rを手放そう……なんて思ってはいけない。そもそものレンズ特性がまったく違うレンズなので、正しい買い方は「買い増し」だろう(笑)。焦点距離が近いだけで、まったく別物のレンズだと思ったほうがいい。だからこそどちらのレンズも使いこなす「楽しみ」がある。焦点距離という意味では「真の50mm」、そしてもう一つの「表現レンズ」が加わったのだ。これから検討している人は、ぜひ大いに悩みながら買ってほしい。とてもおもしろいレンズだ。
文・撮影/大貝篤史 モデル/森崎りな
■この商品の詳細はコチラ
FUJIFILM XF33mm F1.4 R LM WR
https://fujifilm-x.com/ja-jp/products/lenses/xf33mmf14-r-lm-wr/