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写真の「チカラ」 #24 福田健太郎

約3分

自然と向き合うこととは?

写真家として「風景」と向き合っているときは、一人の人間として向き合っている。私にとってその瞬間は、生きている喜びそのものだ。そして、私が自然の一部であることをちゃんと実感できるのが、写真を撮っている瞬間だ。

自然と対話を始めると、幸せが満ちるときもあるし、自分自身もちゃんと生きていかなくてはいけないと戒めるときもある。とにかく自然の中にいると、いろいろ考えさせられることが多い。風景を撮ることは、人生そのもの。だからこそ、飾り立てることもなく、意識して目立ったシーンを狙うこともない。カメラで、ただ心が動く瞬間を掬っていく。

そういう思いで撮影していると、少なからず誰の写真にも「心」が写るんじゃないだろうか。色気を出して、余計なことを考え出すと、独りよがりの写真になってしまったり、浅はかなつまらない写真になったり……。そういう経験を積み重ねていくことで感じたのは、自分をさらけ出すことが重要だということだ。どんな形でも誰かに自分をさらけ出すのは恥ずかしいことだ。しかし、その壁を乗り越えれば、きっと自分が納得できる写真が生まれるはずだ。

複数のカメラを使い分けることで新しい世界が見える

カメラは私にとって、不思議な「ツール」。自分がどんどん変わっていく……。カメラが引き出してくれることは非常に多くて、ときには頼りっぱなしで任せてしまう感覚を味わうことを面白がったり、忘れていた何かに気づかせてくれたり、視野を広げてくれる「相棒」そのものだ。カメラは複数台所有し、デジタルカメラは新しいものが好き。気分や撮りたいイメージによって、変えていく。ひとつ、ひとつ、カメラには個性があるから、おのずと撮影のスタンスが変わるので、まだ経験したことのない、新しい発見や出会いのチャンスが生まれることも…。これからもどんどん写真で新しい世界を見つけていきたい。


福田 健太郎 ふくだ・けんたろう

埼玉県出身。幼少期から自然に魅かれ、18歳から写真家を目指す。写真専門学校卒業後、写真家 竹内敏信氏のアシスタントを経てフリーランスの写真家として活動を開始。日本を主なフィールドに、生命に溢れる自然の姿を見つめ続けている。写真集に『泉の森』、『春恋し-桜巡る旅-』など著書多数。公益社団法人 日本写真家協会会員。