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写真の今がわかるWeb情報マガジン

写真の「チカラ」#16 藤里一郎

約4分
「美しき園」 M/渡辺ソノミ

僕の写真は夢と妄想のカタチ

男は女性に対して「夢」焦がれる生き物……。僕のポートレート写真の原点は「夢と妄想」だ。自らの手でシャッターを切るのは、それは自身の夢と妄想の現れ。しかし写真である以上、その写真を見てくれる人がいる。そういう人の「代弁者」でありたいという気持ちが強い。だから、写真展を頻繁に開催し、多くの人に楽しんでもらいたいのだ。
女性を撮るのはとてもむずかしい。男性であることの探究心をどう「形」にするか。あまりブレーキはかけたくないし、かといって薄っぺらな写真になるのも嫌だ。ギリギリのラインで自我を保ち、その中に美しさを求めていたい。そして、現場で感じる「薫りと湿度」を届けることが、自分なりの真髄だ。

「好き」という気持ちは強いチカラになる

女性モデルと接するときに大事にしていることは、相手のことを「好き」と思うこと。たとえそれが一方的な想いでも構わない。相手には自分が「好き」であるかはそれほど求めない。好きだと伝えれば、反応はまちまちだ。喜んでくれる人もいれば、また言ってるよ!と思う人もいるし、ハイハイと諦められてしまう人もある。でも、諦められたときからが僕の「仕事」だ。そういう瞬間のほうが、なんとなくお互い解り合え、いい作品が撮れることが多い。そのためにも被写体を最大限にリスペクトしているし、解り合える存在でいられる努力は惜しまない。そういう積み重ねが、いい関係を築け、写真に出てくるのだろう。
カメラは僕にとって、目であり、鼻であり、手である。その三感を担ってくれる大切なツール。作品撮りには、デジタルカメラとフィルムカメラの両方を使っている。その時々で表現したいものは変わっていく。特にフィルムカメラは原点回帰をさせてくれる存在。最新のデジタルカメラはとても扱いやすいが、うまく言うことを聞いてくれないのがフィルムカメラ。そんな不自由さが「楽しい」と感じている。大事なのはカメラではなく、残したい僕のイメージと記憶。現像してみると、フィルムでないと写っていない何かを感じることがある。これがあるから、やめられない。


藤里一郎  ふじさと・いちろう

写真家 藤里一郎1969年生まれ。男っぷりのよい写真、色香あふれる写真を撮る当世一“Hip”な写真家。東京工芸大学短期大学部卒業後、大倉舜二氏に師事、96年独立。以降フリー。アーティスト“May J.”のコンサートツアー・オフィシャルフォトグラファーとして活動するほか、人気作家・“伊坂幸太郎”の「死神」シリーズのカバー写真をてがける。2018年度、カメラ雑誌「月刊カメラマン」40周年記念年の表紙を1年間担当し、また、2017~2018にかけてラジオパーソナリティとしての経験も持つ。書籍として日本写真企画刊「ポートレイトノススメ」も出版している。また女優・鎌滝えり、アートディレクター・三村漢との10年間毎年写真展を開催するプロジェクトも進行中。年間10本もの個展を開催しリピーターの多い写真展として認知される。2019年写真展「おんな」をシリーズとして始動、新たに「おんな」というジャンルにも挑戦をはじめる。WebSitehttp://fujisatoichiro.wixsite.com/official
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