シャッターを切ることは日常そのもの
シャッターを切ること、それは「日常」だ。だから撮るときには、それほど意識していない。そんな自分だが、「コロナ時代」になって、毎日のように写真のことを考えている。仕事でもカメラを握る僕にとっては、これからの時代をどう生きていくべきなのか……。僕の写真には2面性がある。仕事の写真、作品撮りという自分の写真。どちらの写真でも共通していることは、自分の思いをしっかりとぶつけ、表現することだ。
写真のテーマの一つに「旅」がある。それは写真に対する道しるべ的存在。もうひとつにポートレートや風景写真などがある。概してそういう写真を撮るときには、心象風景を写し出したかのような写真が多い。作品を撮るときには、フィルムカメラをよく使う。昔は大好きだったアグファを愛用。それからコダックになり、今は富士フイルムを愛用している。
人としての成長が写真になる
自分自身の現状には満足していない。「写真」は人に見せるもの。相手の心の中に「なにか」を残せるものを探しながらシャッターを切り、カタチにしている。写真は芸術のひとつ。その魅力は、心のどこかひとつを掴まれてしまうとその世界観に入り込み、引き込めることだ。
重要なのは、自分が「こう撮りたい」と思ったとき、それに目を向け、伝えること。結局、撮るのは自分。だからこそ写真の中に「自分」があることが、僕である証になる。写真はどんどん成長していく……。それはカメラのテクニックなのではなく、自分自身の「人」としての成長と進化だ。だから撮り続け、生み出された写真に自信を持ちたい。信じていれば、それは写真の「軸」になる。軸がブレなければ、僕はいつだって立ち戻れるのだ。
河野鉄平 こうの・てっぺい
東京都出身。明治学院大学卒業。写真家・テラウチマサト氏に師事し、写真雑誌『PHaT PHOTO』の立ち上げに参加。2003年独立。コマーシャル全般の撮影のほか、写真・カメラ雑誌での執筆やセミナーも多数。著書に『プロワザが身につくストロボライティング基礎講座』(玄光社)、『もっと撮りたくなる写真のアイデア帳』(MdN)など、共著も合わせると40冊以上を執筆。2014年、TIPギャラリー、2015年ポーラミュージアムアネックスで個展開催。Profoto公認トレーナー。