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SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art SHOOTING REPORTS

約7分

メーカーのキットレンズにも採用されるなど、人気のある単焦点レンズである50mm。人気だからこそ様々なシーンで使われるし、ビギナーからプロフェッショナルな人まで納得できるレンズ性能が必要になる。入門向けの買いやすい50mm F1.8レンズやプロも率先して購入し、仕事の現場でも使われる50mm F1.4やF1.2のレンズなど焦点距離が同じでも明るさの違うレンズが多数存在するのだ。「売れる」レンズでもあるので、メーカーは力を入れてくるし、「50mmの写りを見ればそのメーカーの光学性能がわかる」と言われるほど。

今回使用した50mmレンズは、シグマから新発売したSIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art。ミラーレス専用設計にすることで、f1.4という明るさにもかかわらず、小型かつ軽量を実現。明るいレンズは「大口径」になりやすく、その分筐体が大きく重くなってしまう。その恩恵は、実際に使用していても感じることができるほど、撮影時の負担が少なく済む。筐体の質感がよく、高級感があるため所有欲は非常に高い。シグマのレンズは全般に言えるが、このあたりの演出がうまい。高額なレンズだからこそ「所有欲の有無」は購入の決め手になるだろう。

筐体の側面には、絞りリングロック、AF/MFを切り替えるフォーカスモード切替スイッチ、AFLボタン、さらに、絞りリングクリックスイッチなどがレンズを構えた状態で自然と指が届くところに配置されているので、撮影に集中しながら瞬時に切り替えることができ、シャッターチャンスを逃さない。撮影ではPanasonic LUMIX S5IIとLeica SLを使用して撮影したが、ボディーとのバランスはLeica SLとの方がよかった。それでもLUMIX SシリーズのLUMIX S PRO 50mm F1.4との組み合わせよりも圧倒的にバランスがよく、LUMIX S5IIの新しい標準レンズとして活躍してくれそうだ。このあたりもシグマ、パナソニック、ライカ社が同じレンズマウントである「Lマウント」を採用しているメリットだ。

驚異的な描写性能に思わず息を飲む

Leica SL + SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art・f1.4

今回のレビューは漏れずにポートレート撮影なのだが(毎度毎度ですいません)、SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Artのポートレートシーンでの使い勝手を試してみた。まず真っ先に感じたのは、その描写力の高さだ。開放値から使用してもピント面はかなりシャープ。ボケ味に関しても非常に立体感を感じるボケで驚いた。絞り込んでf2.8ぐらいにするとさらにシャープさが増すが、それでもボケが固くなることがない。これには不思議な印象を受けた。ただ、開放値での解像感がまさに「半端ない」ので、ボケ量をコントロールするために絞り込むというような使い方が合っているレンズだ。ボケ感を生かした写真を撮りたい場合には、躊躇せず開放値を選びたい。それほど開放値の「表現力」があるレンズだ。周辺に関しても開放値から落ちることはなく、全体的にしっかりとした解像感がある。絞り込めばさらに繊細になるイメージで、細かいディテールまでしっかりと描いてくれる。芯がしっかりした描写力なので、画に厚みがあり、ポートレートだけでなく、スナップなどにも最適なレンズだ。

Leica SL + SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art・f1.4 (上)
Leica SL + SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art・f1.4 (中)
Leica SL + SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art・f1.4 (下)

さらに驚かされたのは「AF速度の速さ」だ。AFの合焦スピードに関しては従来のモデルと比べると格段に快適になっている。動作音に関してはシグマのレンズはそもそも静かなので、それほど違いがわからなかったのだが、また別の撮影ではかなりの暗所で撮影したのだが、合焦精度が高く様々なシーンで撮影できた。暗くなってきてもAFが合いやすいと、朝から晩まで1日中使えるので、完成度の高い作品を残せる確率が高くなるだろう。

Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art・f1.4

最初の1本として購入できる一生付き合えるレンズ

50mmレンズは一般的に「足で稼ぐ」レンズとしても有名。だからボケや画角をコントロールしながら撮影する必要が、レンズの使い方を教えてくれる教材のようなレンズでもある。使いこなしてしまえば、これほど使いがいのある焦点距離はなく、個人的には「最初の1本であり、最後の1本」としておすすめしたい焦点距離だ。しかし使い込むと出てくる不満が「もう少し中望遠レンズのようにボカしたい」という思いにかられることだ。


Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art・f1.4 (上左)
Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art・f1.4 (上右)
Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art・f1.4 (下)

比較的安価なf1.8シリーズでは物足りなくなり、f1.4やf1.2などより明るいレンズを求めたくなるのだ。ポートレートシーンではなおさら「ボケやすい」レンズがほしくなる。4万円前後で手に入るf1.8系のレンズに比べると、高額だと感じるかもしれないが、最初からf1.4のレンズを買ってしまうというのもありではないか。SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Artは14万円前後とこの描写性能を考えるとかなりコストパフォーマンスがいい。最初の1本として購入するのもありだ。今のところ、Eマウント、Lマウントに対応しているので、ソニーαユーザーやLUMIXユーザー、ライカSLシリーズのユーザーがターゲットになる。αシリーズは50mmのラインナップが充実しており選択肢は豊富。しかし、ライカSLユーザーとLUMIXユーザーにとっては、貴重な50mmレンズの選択肢としてこれから重宝するだろう。

Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art・f1.4 (上)
Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art・f1.4 (下)

プロユースを想定したしっかりとした造り

SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Artに限ったことではないが、筐体の造りがしっかりしているので、持ったときに安心感がある。防塵かつ防滴性能であることであらゆるシーンで撮影が可能。絞りリングのクリック感も丁度よく、カチカチと動かす楽しさがある。フォーカスリングは適度に重たいので、昨今のデジタル専用レンズのチープさは皆無だ。プロが現場で気持ちよく撮影するための「配慮」がされており、そういうスペックの数値には表れないところにこそ、このレンズの魅力が詰まっている。

Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art・f1.4 (上)
Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art・f1.4 (下)


文/写真 大貝篤史 モデル/AKO

■製品ページ
https://www.sigma-global.com/jp/lenses/a023_50_14/