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SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art SHOOTING REPORT

約6分
SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Artのポートレート写真

専用設計の恩恵は使い込みたいという意欲を高めてくれる

 2021年5月に発売したシグマの新単焦点レンズ「SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art」はミラーレスカメラ専用設計となった。その恩恵は絶大で、筐体自体のサイズおよび重量は、SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Artに比べて、かなりの小型かつ軽量化(Lマウントモデルにおいては約110gもの軽量化)に成功している。筆者はLマウント用のSIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Artを持っているが、その重さと大きさに少し持ち出すことを躊躇したくなることが多かった。しかし、その写りはピカイチだからこそ、それでもカメラバックにいれてロケに向かうのだ。そうした苦労がこのレンズが発売されたことで、少し軽減されるのは素直に嬉しい。

 昨今、フルサイズミラーレスカメラもより小型化されていく傾向があり、大型で重量のあるレンズ群は少し扱いづらいと感じるようになった。せっかくボディーが軽くてもレンズが重く大きいのでは、その利点を生かしきれない。シグマは本当に「かゆいところに手が届くレンズ」をリリースしてくれる。

 焦点距離が35mmなので、準標準レンズといったところだろうか。個人的には非常に好きな焦点距離で、自分の足で様々な「画」を写し出せるのがいい。風景からスナップ撮影、そして、開放値の明るさを生かしたポートレート撮影まで、どのジャンルの被写体でもこなせてしまう、ぜひ持っていたい1本だ。この手のレンズの作例は風景やスナップが多いので、orphotographではポートレートを中心にその使い勝手をレポートしたい。

SIGMA fp L + SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art ・f1.4
SIGMA fp L + SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art ・f1.4
SIGMA fp L + SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art ・f1.7

ポートレートシーンに最適な準標準レンズ

 このレンズの一番の魅力は、開放値の写りだ。やや広角気味の焦点距離なのでポートレートには不向きだと考える人はいるだろう。しかし、f1.4とかなり明るいレンズなので、十分に背景をぼかすことが可能だ。その時のボケ味が非常にクリアで透明感があり、「スーッ」とボケていく感じは病みつきになる。それでいて厚みのようなものがあり、立体感を感じることができるのだ。このボケ味があれば、積極的にポートレートシーンでも使っていける。f4程度まで絞り込むことで、周辺まで解像感が増す。ディテールをしっかりと写し込みたいなら絞り込めばいい。今回の撮影には、シグマのfp Lに装着して使用したこともあり、全体的に非常にコンディションのいい解像感が得られた。約6100万画素という高画素モデルとの組み合わせでも、レンズが負けているとはまったく感じさせない光学性能だ。これには恐れ入る。同じLマウントを採用しているPanasonic LUMIX S5でも使用しているが、もちろんそのボケ味、解像感は変わることなく味わえる。レンズのAF性能も非常によく、走っているモデルにもしっかりと追従し続けた。

 35mmという画角を生かした背景情報をふんだんに取り込んだポートレート撮影から、ガツンと被写体に寄ることで迫力と生々しさのある画作りまで、自分のアイデア次第でバリエーションを豊富に生み出せる。まさに「写真スキルを育ててくれる」レンズと言ってもいい。こういうレンズが昨今少ないので、使っていてワクワクしてしまった。

SIGMA fp L + SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art ・f6.3
SIGMA fp L + SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art ・f1.8
SIGMA fp L + SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art ・f1.4
SIGMA fp L + SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art ・f3.5
SIGMA fp L + SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art ・f1.4
SIGMA fp L + SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art ・f2.5

道具としての作り込みの良さがシグマらしい1本

 筐体の作りも非常によく、所有欲が湧く。「I」シリーズはどちらかというと、趣味のレンズという趣があるが、この「Art」ラインはプロも認める芸術作品を作り出すツールという意識を筐体から感じる。まさに「ガラスのかたまり」感があり、撮影意欲が高まる。絞りリングもあり、クリック感も良好。瞬時にf値を変更したいときに重宝する。また、動画ニーズにも対応するために、絞りリングクリックスイッチを搭載。「CLICK OFF」にすることで、リングをフリーにすることができ、音を出さずに任意のf値にすることが可能。さらに、絞りリングロックスイッチも搭載。「A」の位置に合わせてONにすれば、ボディー側のみで変更でき、「A」以外でONにすると、回しすぎて「A」に入ってしまうことを防止してくれる。この機能は地味にありがたい機能だ。もちろん、お馴染みの「フォーカスモード切り替えスイッチ」や「AFLボタン」(※ボディーによる)なども装備されている。

 また、プロユースを見越した高い精度での組付けと防塵・防滴性能を実現。さらに、前玉には撥水防汚コートが施されているので、厳しい環境下でも安心して使えるレンズだ。

 ツールとしての信頼性と徹底した使い勝手の追求。シグマのクラフトマン精神にはいつも脱帽する。そして、写りへの一切の妥協を捨て、レンズ本来の目的を具現化しているこのレンズは、「買い」のレンズであることは間違いない。ぜひ、高品質な35mmの単焦点レンズを長く愛用したい人におすすめしたい至高の1本だ。



SIGMA fp L + SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art ・f2.2
SIGMA fp L + SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art ・f1.4
SIGMA fp L + SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art ・f1.4


■文・撮影/大貝篤史 ■モデル/大迫瑞季

SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
https://www.sigma-global.com/jp/lenses/a021_35_14/

SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
https://orphotograph.com/2021/03/19/sigma-28-70mm-f2-8-dg-dn-contemporary-shooting-report/