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富士フイルムでポートレート撮る楽しさ

約5分

もともと愛好者の多いと言われている富士フイルムのXシリーズ。Xシリーズ「X-Pro1」が2012年に発売しているので、富士フイルムが本格的にデジタルカメラを世に送り出してから、もう10年以上になるのだ。この10年で人気を維持している理由の一つが、富士フイルムのXシリーズに搭載されている「フィルムシミュレーション」だ。これはフィルム事業を行っていたノウハウを活かし、独自のカラープロファイルをカメラ内に予め入っており、それを自分のイメージに合わせてチョイス、撮影するというものだ。

モードによっては、このカメラならではの世界観を導き出すことができ、現像ソフトなどで「明るい暗室」作業がなくても、十分にオリジナリティーのある写真が楽しめる。筆者もモデルの日常感を感じるようなスナップポートレートを撮る場合には愛用している機能だ。

筆者がポートレート撮影時によく使うのは、「クラシックネガ」「PRO Neg. Std」そしてX-T5、X-S20から追加された「ノストラジックネガ」だ。頻度が高いのは「クラシックネガ」でフィルムライクな一枚を撮影できる。このクラシックネガで撮影すればポートレートに関わらず、風景、スナップ撮影でもエモい一枚が撮れてしまう。まさにスナップポートレートの世界観を具現化したようなフィルムシミュレーションだ。

X-S20 ポートレート

FUJIFILM X-S20 + SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary

X-S20 ポートレート

FUJIFILM X-S20 + XF 35mm F1.4 R

FUJIFILM X-S20 + XF 35mm F1.4 R

透明感のあるポートレートを撮りたいなら「PRO Neg. Std」がおすすめ。スキントーンが美しく描かれ、嫌味のない人肌表現がいい。ポートレート撮影ならやはりスキントーンは気になるところ。個人的な感想だが「PRO Neg. Std」はよくもわるくもデジタルカメラでの撮影であることをもろに感じてしまうので、海など光がしっかりとあるシーンでしか使わない。

X-S20 ポートレート

FUJIFILM X-S20 + SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary

X-S20 ポートレート

FUJIFILM X-S20 + XF 35mm F1.4 R

X-T5およびX-S20から追加されたフィルムシミュレーション「ノスタルジックネガ」は、クラシックネガよりもフィルム感が少し薄れ、よりクリアな透明感を感じる。クラシックネガだと「やり過ぎ感」を感じる人にはおすすめしたい。筆者もまだまだ研究中のフィルムシミュレーションだが、使いこなせば、スナップポートレートでは最適なものになるかもしれない。

X-S20 ポートレート

FUJIFILM X-S20 + XF 35mm F1.4 R

X-S20 ポートレート

FUJIFILM X-S20 + XF 35mm F1.4 R

頻繁に使うことはないのだが、夜間の撮影や暗所では「ACROS」というモノクロのフィルムシミュレーションを多用している。これは、イルミネーションや街頭の光などをいれて撮る場合には、その光に意味を持たせたくなる。その場合にはカラー系のフィルムシミュレーションを使用しているが、ポートレート撮影の場合に、暗所だと「生生しさ」が出てしまうケースがある。そういうときには、写真をモノクロにすることで、カラーという邪魔な情報がなくなり、フラットに見ることができる。また、色がないことで「想像」でき、そういう楽しみ方があるものいい。メリハリのある作品づくりにはおすすめな効果だ。

FUJIFILM X-S20 + XF 35mm F1.4 R

富士フイルムのフィルムシミュレーションのおかげで、かなりイメージを作り込んだ「作品撮り」ではなく、ライトな「街ぷら撮影」でのワークフローもだいぶ改善された。今までだとセレクトしたあとに、Adobe Photoshop Lightroomで現像処理をするという工程だったが、現像処理の部分に関して省略できるので、少し露出が気になる写真だけPhotoshopでトーンカーブをいじる程度の修正で済む。SNSの普及で「1日2〜5回」程度の写真アップなど当たり前の時代。限られた時間の中で、自分の伝えたい世界観をこのフィルムシミュレーションで迅速に表現できる。

X-S20もそうだが、フィルムシミュレーション自体の調整はボディー内でかなり細かく行うことが可能で、さらに自分好みの色合いやノイズの出方のプリセットを作り、それをいつでも簡単に読み出せるように登録させておくことが可能だ。プリセットを3つほど作っておき、撮影中に色々と変えながら撮影できるのは、結構おもしろい。
自分らしいポートレート作品の方向性さえ見つければ、富士フイルムのフィルムシミュレーションを使いこなすことで、自分らしい「一枚」が撮れるかもしれない。

文・撮影/大貝篤史 モデル/CHISATO 

□製品情報 FUJIFILM X-S20
https://fujifilm-x.com/ja-jp/products/cameras/x-s20/