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SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS SHOOTING REPORT

約7分

シグマより2023年12月に発売された待望のミラーレスカメラ専用設計のレンズ「SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports」。すべての撮影ジャンルで一度はお世話になることがある万能レンズであり、だからこそ高い性能を求められてきた大三元レンズのひとつだ。ミラーレスカメラ用に専用設計されたことで、非常にコンパクトで軽量。質量も約1,345グラムとこの手のレンズにしては軽いのだ。フィルター径は77φと一般的。最小絞り値もf22と絞り込める。厳しい撮影現場などでの使用を想定されているため、フードも含めて、マグネシウム、CFRP、TSCなどの素材を使用し、高い耐久性と信頼の剛性感を得ている。LUMIX S5IIに装着しての撮影だったが、一昔前の70-200mm F2.8のレンズに比べると見た目以上に軽い印象だった。ショルダーに掛けていたが、普段単焦点レンズを多用している筆者にはさすがにズシリとしたが、モータースポーツの撮影をしている友人曰く、「これはかなり軽い」とのこと。さらにインナーズーム機構なので、全域で全長が変わらないのも使いやすい。インナーズーム機構の利点は、防塵・防滴性能に優れているということだ。水滴や粉塵の入り込みが少なくなり、安定した性能をしっかりと維持できる。スポーツ撮影など失敗が許されないシーンでは重宝するだろう。三脚台に関しても360°回転するので取り回しがいい。三脚に固定しながらでもアングル変更にストレスがないのは風景写真や飛行機、鉄道写真など比較的三脚利用率が高い撮影ジャンルのヒトにはオススメだ。

瞬間を逃さないさまざまな配慮がいい

筐体部には数多くのカスタマイズ用のスイッチ類が搭載されている。このあたりもスポーツ撮影など望遠域を使用する比率の高い撮影シーンに配慮された結果だ。物理ボタンやスイッチが多いことで、直感的な操作が可能になり、ボタン配置さえ覚えてしまえば、ノールックでの操作もできる。狙った瞬間を捉えるためにも、フォーカスリミッタースイッチは必須で、プロユースもしっかりと見据えた設計だ。

AF性能に関してもフローティングフォーカスを採用。2つのフォーカス群をお互い逆方向へ動かすことで、1つのフォーカス機構よりも移動量が約半分に短縮できる。これにより、高速なAF速度を実現している。AFのモーター自体も推力の大きいものを採用することで、速度に貢献。これにより正確かつ高速なAFを楽しめる。また、静音性能が優れているので、動画撮影時にフォーカス音を気にすることなく撮影できるのもいい。

また、フォーカスブリージングを抑えた設計になっているため、ピント移動による画角変化が少なく、動画撮影時におけるフォーカス送りが自然な感じで行える。 手ブレ補正機構も最新のアルゴリズムOS2を採用。ワイド側で約7.5段、テレ側で約5.5段を実現している。またいくつかのモードを搭載しており、初期設定では一般的な撮影に適している「手ブレ補正モード1」、流し撮りなどに適した「手ブレ補正モード2」を搭載。手ブレ補正モード2なら、構図の横位置、縦位置に問わず、カメラを上下や斜め方向に動かしても手ブレ補正がしっかりと働くため、画角に集中できる。

+アルファなポートレート体験ができるレンズ

Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports 1/6400秒・f2.8・ISO100

世にはきっと「動きもの」の作例などが多数上がっているだろう……と思い、orphotographでは、定番のポートレート撮影で使用してみた。70-200mmという焦点距離はポートレート撮影でも比較的よく利用することがある。筆者は標準域での単玉利用が多く、あまり普段使わない焦点距離だ。ただ、圧倒的に画が変わるので、作品のバリエーションを意図的に増やしたいシーンなどには、非常に役立つ焦点距離だ。200mmで開放値の撮影は、強烈な圧縮効果を得ることができるため、標準域よりも立体感のある撮影が可能になる。

Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports 1/2000秒・f2.8・ISO100

このレンズは開放値であるf2.8から積極的に使用したいレンズだ。とにかく近年まれに見る「シャープさ」が特長だ。開放値からかなりシャープで解像度が不足しているから絞り込む……ということはきっと起きないだろう。ピント面はかなりクリアかつシャープなため、より立体感を感じる。また被写体を際立たせることになり、主題を明確にすることが可能だ。しかし、だからこそいい加減に撮ると、画として成立させることが難しく、最初の頃は少し戸惑った(日頃あまり使わない焦点距離ということが多分にあるが)。慣れてくると、非常に美しいクリアな作品を撮ることができる。絞り込めば全域にピントが出てくるというイメージで、そのあたりのコントロールのためにf値を決めるような使い方が向いたレンズだ。

Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports 1/1000秒・f2.8・ISO100

AF速度に関しては非常に高速。LUMIX S5IIとの組み合わせだが、特に挙動がおかしいことがなく、最高のパフォーマンスを発揮している。ボディー側の「認識AF」機能との相性も良く、迷わず瞬時に被写体を捉えてくれる。任意のAFポイントでの撮影の場合に個人的には本体のAFモードは「1点+補助」を選ぶのがおすすめだ。このモードならストレスなく使えた。ポートレート撮影時に重宝する「顔・瞳認識」にもしっかり対応。この辺の精度が高いのはうれしい。LUMIX S5IIとのバランスはそれほど悪くなく、振り回しながら撮影しても、疲労感は少なかった。α7シリーズ、LUMIX S5シリーズもボディーサイズが小さいため、できればバッテリーグリップなどを併用すると、より安定感が増すだろう。

Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports 1/3200秒・f2.8・ISO100
Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports 1/1600秒・f2.8・ISO100
Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports 1/400秒・f8・ISO100
Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports 1/3200秒・f2.8・ISO100

写りに関しても、ボケ味に嫌みがなく派手さもないが、安定した画が撮れるためむしろ好感が持てる。ボケ感に関しても、写しく、海の反射した丸玉も個人的には合格点だ。にじみも少なく、しっかりと開放値から円形を保てている。ポートレートということもあり、逆光シーンでの撮影も結構あるのだが、作例のように破綻することなく、階調感を表現できるレンズだ。

Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports 1/8000秒・f2.8・ISO100(上下ともに)

筆者的には、よく使う焦点距離域は単玉でしっかり揃え、普段使わない望遠域をこの1本のレンズですべて済ますという使い方が非常にイメージできた。望遠を使ったポートレート撮影なら、この1本さえあれば、十分にイメージ通りの作品を撮ることができるだろう。「なかなか出ない70-200mm」と数年前から首を長くして待っていたヒトも多かっただろう。待たされた甲斐が確実にあるSIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sportsだ。

文・撮影/大貝篤史 モデル/Doyon

Panasonic LUMIX S5II + SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports 1/2000秒・f2.8・ISO100

■製品情報■
シグマ https://www.sigma-global.com/jp/lenses/s023_70_200_28/
パナソニック https://panasonic.jp/dc/products/s_series/s5m2_s5m2x.html