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Nikon NIKKOR Z 85mm f/1.2SS HOOTING REPORTS

約4分

2023年3月24日から発売予定のNikon Zマウント待望のf1.2シリーズに85mm中望遠レンズが新たに加わった。ZマウントはNIKKOR Z 85mm f/1.8Sがラインナップとして存在しているが、さらにボケ感を味わえるレンズの登場にポートレートを主に撮影している人には気になる存在だろう。f1.2だと先行して発売しているNIKKOR Z 50mm f/1.2Sがあり、こちらもレビューを行ったことがあるが、ボケ感は芯のあるボケで全体的に固めなイメージだった。その流れはNIKKOR Z 85mm f/1.8Sも組んでいるように感じた。誤解がないようにしたいのだが、固いというのはボケないのではなく、ボケ自体がしっかりしているので、高い「立体感」を得ることができ、被写体をしっかりと浮立たせることが可能だ。まさに背景と分離しているのでは……。と疑うほどだ。

この強烈な立体感は開放値がf1.2と驚異的な明るさだからではなく、ピント面の解像感の高さがもたらす「効果」でもある。ピント面のまつ毛、髪の毛一本一本を繊細に描けるため、「ここまで写るのか」と感じるほどピント面はシャープ。中望遠単焦点レンズに期待されることをしっかりとこなしてくれるレンズなのだ。

絞り込むことで、全体的な解像感は徐々に増していく。f4まで絞り込む必要をあまり感じないほど、開放値から解像感がある。このレンズで表現したいイメージをコントロールするために、絞りをコントロールしていくイメージだ。最近のレンズは各社同じ傾向にあり、オールド系レンズとの使い分けが明確になる。圧倒的な「描写力」を期待したい作品を撮りたい場合には、このレンズはまさに「無敵」だと思われるほど。 また、開放値で出やすいパープルフリンジはしっかりと抑えられている。ここに関しては他社製レンズよりもアドバンテージを感じた。もちろんシーンによっては完全に抑制できないだろうが、よほど意地悪なシーンでない限り積極的に開放値で使用できる「環境」がこのレンズにはある。

開放値 f1.2の「意味」

なんといっても、一番の特長は開放値のボケ感だ。一世代前のレンズの場合にはf1.2のレンズだと、開放値の解像感がなくあまり実用的ではなかった。しかし、NIKKOR Z 85mm f/1.2Sなら、その憂いは皆無だ。積極的に開放値を使っていけるので、ポートレートシーンではかなり独特の世界観を表現できる。さらに、点光源の玉ボケも非常にクリアで適度な圧縮効果を演出しながら撮影すれば、幻想的な世界観を表現できる。f2.8ぐらいまで絞り込めば、周辺の玉ボケがしっかりしてくるので、絞りで遊べるレンズだろう。

AF性能に関しては、思っていたよりも迷わず合焦した。AF精度も決して悪くはない。精度もさることながら、速度に関しては近接時の合焦速度が速い。ボケやすいレンズにこのAFモーターは非常にありがたい。スーッと合うイメージで、動きにも不自然さがなく気持ちのいいAF動作だ。暗いシーンでの撮影では、開放値だと少しAFが迷うシーンがあったが、概ね合焦した。

唯一気になったのは、Zボディーとのバランスだ。フラッグシップモデルであるZ 9ならバランスはとてもいいと感じたが、今回撮影で使用したZ 7IIだと少しフロントヘビーなイメージだ。当たり前だが開放値がf1.2ということを考えれば、大口径になるので必然的に大型になる。性能面とトレードだと考えれば、十分にその魅力を感じる。ニコンのZシリーズを持っていて、ポートレートで本格的に作品撮りを行いたい人やプロの現場で確実な一枚を撮影したい人までおすすめの1本だ。価格は36万円前後(実売価格)。


文・撮影/大貝篤史 モデル/MIYAMU

■製品情報ページ

https://www.nikon-image.com/products/nikkor/zmount/nikkor_z_85mm_f12_s/