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Nikon Z fcで「良き古き時代」の雰囲気を楽しむ

約4分

写真表現の引き出しを増やしてくれる存在

今回はニコンのZ fcにオールドレンズを付けてのレビューだ。正確にはこれで2回目で、前回はライカのMマウントを装着できる焦点工房のマウントアダプターを使用してのレビューだった。次に手を出したのが写りの良さで定評のあるCONTAXのGマウントレンズをチョイス。焦点工房からリリースされているTZG-01を使って撮影してみた。使用したレンズは、Planar T*35mm F2、Planar T*45mm F2、Sonnar T*90mm/f2.8の3本だ。どのレンズも美しいボケ感で定評のあるツアイスレンズで、オールドレンズらしく、きれいなフレアとゴーストが開放値付近で味わうことができる。APS-CモデルであるZ fcなのでレンズの中央部を使用するため、非常に解像感の高い写真を撮影することが可能。絞り込むことで枝の1本1本をきれいに描けるほどの描写力だ。それでいてオールドレンズらしく「逆光」には弱く、それがまた写真のアクセントになるシーンがたくさんあった。

TZG-01の動作も良好で、決して速くないAFだが、精度は比較的よく、AF-Sモードであれば十分に使用できる範囲だ。焦点距離は他のマウントアダプターと同様、カメラ側の開放値を指定のものに設定することでEXIFデータにも記録することが可能だ。正直どの焦点距離で撮影したかはそれほど重要ではないし、フィルムカメラ時代はそもそも焦点距離の記録など一部のモデル以外出来なかった。ただ、TZG-01のMF操作は非常にやりにくい。小さなダイヤルを「一生懸命」に回すことでAFが動くのだが、これがかなり大変。指が疲れるほど回さないと、調整できないのだ。これはぜひ少し仕様を改良してほしい……。

なにもそれほど肩肘張らなくてもいい

ニコンのZ fcがとても優れている点はデザインだけではない。自然とスッと手が動いてファインダーを覗けるほどのナチュラルさだ。「撮るぞ」と意気込まなくても、自然体で撮影ができる。撮影者の「ある日」にきちんと寄り添えるカメラだ。昨今、高性能化が進んでいるミラーレスカメラだが、その競争の影に置き忘れてしまった感情を、このカメラは掬い上げてくれるのだ。それは決してデザインが「オールド」だからではない。軽さ、サイズ、何よりもカメラとしての基本性能をしっかりと保持しているからこそのバランスの良さがそうさせる。クルマもそうなのだが、トータルバランスが悪いクルマは売れない。このカメラはそういう意味ではベストチョイスになるカメラだろう。

Z fcとの相性はとてもよく、昔ながらの雰囲気を感じる事ができる写真が撮れる。Z fcに搭載れている機能「クリエイティブ ピクチャー コントロール」を使用することで、JPEG撮って出しでフィルムライクな写真を撮ることができる。ボディーデザインとの相性もよく、お散歩カメラとしての見た目は非常に完成度が高い。写りに関してもF4程度まで絞り込むことで、安定した解像感が得られる。特に使いやすかったのがPlanar T*35mm F2だ。35ミリ判換算で約50ミリ相当になるため筆者のよく使っている焦点距離に近かったことがある。AFの動作もこのレンズがもっとも安定感があり、使用していてストレスを感じないのも重要なポイントだろう。開放値がf2なので、それなりにボケ感も味わうことができ、絞ることでパンフォーカスな写真を楽しめる。Z fcの小気味なシャッター音も相まって非常に撮影時のテンションが上がる組み合わせだった。

ミラーレスカメラらしい楽しみ方ができ、さらに昭和の匂いがする「エモい」写真を直感的に撮影できる。これこそ、良き古き時代の産物と最新テクノロジーが為せる技だろう。固定概念にかられることなく、カメラライフを楽しんでほしい。きっと個性あふれる自分だけの表現が見つかるはずだ。

文・撮影/大貝篤史


■製品情報■

Nikon Z fc  https://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z_fc/
焦点工房  http://stkb.co.jp/

https://orphotograph.com/2021/10/11/nikon_zfc