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河本花波 「VOICE」の行方

約4分
河本花波の写真

人の気配を絶妙に描く

普段からポートレート作品を中心に写真家として活動している河本花波さん。彼女のモノクロ・ポートレート作品にはどれも拭えない「人間臭さ」が染み付いている。何気ない仕草や表情をしっかりと捉えていることは言うまでもなく、どこか人間の本質に当たる部分をそっと表現している写真に見える。

「普段から撮影の際には、モデルの雰囲気や性格に合わせてコミュニケーションするようにしています。しゃべるほうがいい場合にはしゃべりながら、集中するために自分の世界観に入るモデルの場合には、あまりしゃべらずこちらも静かに待ちます。そうしているうちに、モデルとシンクロしていく『世界観』や『空気感』を感じたら、集中して撮影しますね。もし、相手が不安がっていると感じれば、カメラのモニターを見せて今どんな風に撮れているのかを一緒に確認したり……。やはりコミュニケーションは大事ですね」

そう語ってくれた河本さん。人物撮影の場合には、モデルとの距離感や関係性がそのまま写真に現れることが多い。いかに相手をリスペクトして理解できているかはとても重要だ。ポージングやロケーションに頼りすぎることなく、「自分の内なるもの」を表現し続けたいという河本さんのモチベーションを感じる写真だ。

「私自身が社会人2年目なのですが、意識しないとそのまま普通に流れていく日々の時間の中、自分の感情をころして仕事をしている、まるでロボットのように感じることがあります。小心者なので、なおさら自分の感情を素直に周りにぶつけることができないのかもしれません。そんな中、だんだん孤独になる……。その気持ちやエネルギーを写真として表現している部分があります。『負の感情』かもしれませんが、エネルギーであることには違いません。写真を撮っているときは、正直になれるし、自分を表現できている気がします。作品を見てくれた皆さんなりに、撮影時の『空気』や『被写体の気持ち』、そして私の心の『声』を感じ取ってほしいと思います」

河本さんの話を聞いていると、筆者と同じものを感じる。筆者も作品を撮るときには、遠い昔に失ってしまった女性への「淡い思い出」を綴っている。それは自分の願望であり、憧れであり、そして「なりたい自分」なのだと……。写真は自分を写し出す鏡のような存在だ。意識していなくても、そういうものになっていく。だからこそ、ちゃんとカメラをぶら下げて被写体と対峙し、その先に見える「なにか」を追い求めているのだろう。何を追い求めているかは、人それぞれでいいのだ。河本さんの写真を見ていると勇気をもらえる。そういう写真が今は少なくなった。心のVOICEが入り込んでいる写真は見応えがある。ぜひ、写真展など開催してほしいものだ。

写真/河本花波 モデル/原 有純 文/大貝篤史


河本花波 こうもと・かなみ

兵庫県生まれ。幼少期から、思うがままに絵を描いていた。高校1年生の頃、何気なく興味をもった写真部に入部したことがきっかけで写真に目覚める。ポートレートを中心に作品を撮り続けている。Nikon TopEyeフォトコンテストにて準TopEye賞受賞。EPSON meetup! -selection-にてプリント部門 グランプリ受賞。公益社団法人 日本写真家協会JPS展2020 東京都知事賞受賞。

​初個展「アオハル展」
ネイルアーティストNARUMIとのコラボ展「Nail art × Photo Exhibition」
EPSON meet up! -selection-の受賞者による作品展「meet up!-EXHIBITION-」

https://komotokanami.com/