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GRIIIxの苦悩

約5分

こんなはずじゃなかったGRIIIx

高級コンパクトデジタルカメラとして人気の高いGRシリーズ。その最新モデルがGRIIIシリーズだ。GRの伝統でもある35mm換算で28mmという焦点距離は、少し広いのではないかと最初は思うのだが、使っていると自然と馴染むスナップには最適な焦点距離のように思える。さらにその圧倒的な小型・軽量なボディーはまさに「スナップシューター」と言える機動力満点なカメラだ。

約2400万画素センサー、APS-Cサイズ、ボディー内手ブレ補正機構などてんこ盛り感のあるGRIIIの魅力に取り憑かれた筆者は、購入を決意。しかし、ふと思ったのだ。ポートレート撮影が主力の筆者にとっては、この焦点距離はやはり「広い」のではないかと……。そんな思いから、なかなか手が出せなかったGRIIIなのだが、途中からGRIIIxというモデルが追加された。これは焦点距離が35mm換算で40mmと標準域とされている50mmに近い。こっちのGRIIIxのほうがポートレートもスナップも両方使えていいのではないかと考えてのだ。

遂に購入したがここからが問題

そして遂にこの品不足が続く中購入したのだが、ここから「苦悩」が始めるのだった。 実際にorphotographのポートレート企画の撮影時に持ち出してテストを兼ねて撮影してみたのだが、これが本当にうまくいかない。40mmという画角がよくないのかイメージ通りの写真が撮れないのだ。心の中で「こんなはずじゃなかった」とつぶやきながら、何度もトライするが、35mmもしくは50mmの単焦点レンズを装着したLUMIX S5IIのほうがしっくりくるのだ。本当に数ミリの焦点距離の差がこれほどまでに「苦痛」に感じるとは……。

こういったスナップを撮影している分にはかなり使い勝手がいいのだが…苦笑

40mmなので35mmだと思って使うほうが生きてくるのではないかと思ったのだが、それだとやはり狭すぎる。だからといって一歩下がればいいじゃんと思いながら下がるのだが、それがどうしてか今度は「広すぎる」のだ。この意味不明なマジックにかかりだすと、もう抜け出せない(笑)。ブツブツと言いながらの撮影が数時間続き、まさに不審者状態だ。写真家の下薗詠子さんにこの話をすると「早く飽きて私のところへ嫁ぐのだ」と言われる始末。 それでもせっかく買ったんだから、使いこなしたいという気持ちを胸にこれから現場にちょくちょく持っていくつもりだ。

それでも軽快な撮影ができる相棒

使い始めて約2週間が経ったころから、少しだけ理解できるようになってきた。GRIIIxを購入する際に、どこか「ポートレートが撮れる」と思い込んで使っていたのが良くなかったようで、「スナップやオフカットしか撮らない」となんとなく目標をつくると使いやすく感じる。コツは50mmより半歩下がるぐらいの距離感で撮影するとうまくいく。一歩下がると遠くなるので、半歩でいい。このあたりの感覚が身に付くと、GRIIIxでのポートレート撮影がスムーズに行える。
また、GRIIIxでは狭いかなと思っていたスナップ撮影が楽しくなってくる。決して狭くはなく、むしろ丁度いいと思えるほどだ。やはりGRIIIxはスナップカメラなんだなーと思ってしまう瞬間だった。

さらにスマートフォンとの連動もアプリをダウンロードすることで可能になり、JPEGをすぐさま取り込めるのがいい。もちろんRAWも取り込めるのだが、スマートフォンの容量などを考えるとJPEGを入れて、すぐさまSNSに投稿するような使い方がいい。最新ファームアップ(2023年4月現在)で追加されるクリエイティブコントロール「ネガフィルム調」も面白い。個人的にはデフォルトで使うのではなく、自分なりにカスタマイズしたほうがいいと思うのだが、20代が言うところの「エモい」感じの写真が比較的かんたんに撮影できる。

スマフォにかんたんにリンクできて、カメラ内の画像が転送できるのは嬉しい

スナップ撮影をメインにたまに人物を撮るような使い方ならGRIIIxという選択はアリだ。スマートフォンのカメラ機能は年々レベルアップしているが、焦点距離はだいたい28mm前後のことが多い。であれば、GRIIIの画角で撮りたいならスマートフォン、それよりも少しボケ感なども出しながら被写体とより際立たせたいときにはGRIIIxという使い分けで旅行や作品づくりもできるのではないか。そして、どうしても欲しくなったらGRIIIも購入すればいいのだ(笑)。まだまだGRIIIxを使った修行の旅は続くだろうが、これからも使いこなせるようになりたい。

文・撮影/大貝篤史 モデル/大道智子

■RICOH GRIIIx
https://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/products/gr-3/