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Nikon Z 8 SHOOTING REPORT

約6分

丁度いいサイズ感と使用感

ニコンより2023年5月末に発売になったZ 8。一眼レフカメラでいうところのD800系と同じ立ち位置になるミラーレスカメラだ。フラッグシップとして「Z 9」が先行して発売していたが、普段使いにはやや大きすぎるというイメージだった。このZ 8 に関しては、小さすぎず大きすぎない、非常に使いやすい大きさだ(重量は約910g)。ミラーレスカメラだからこそ「小型かつ軽量」である……という意見は正しいし、筆者もその意見には賛同できる。しかし、一部の需要では「ある程度の重量感がほしい」「オールマイティーに使うから望遠系との組み合わせを考慮したい」「プロの現場ではそこそこしっかりしたボディーサイズが望まれる」などなど、様々な意見がある。条件によっては「小さい=正義」にはならないことがある。そういうシーンでも使っていけるという意味ではZ 8はまさにオールシーンで使えるミラーレスカメラだ。

男心をくすぐるデザイン。外観だけで購入してしまいそうなボディーデザインだ

フルサイズセンサーモデルとして必要十分な性能

センサーサイズはFXフォーマットを採用。フルサイズセンサーならではの豊かな色調が素晴らしい。伝統の色方向性である「ニュートラル・カラー」(忠実色)も健在。JPEG撮って出しでもRAWデータでの現像処理でも基本がしっかりした色づくりなので、自分の用途に合わせて調整可能だ。RAWデータの現像においては、自分の狙った色になりやすく、仕事などでバリバリ使うという人にはおすすめだ。 ボタン類の配置に関してはニコンの「それ」で安心感がある。D800系を使っている人ならそれほど迷うことなく使えるだろう。握ったときの質感は非常に高く、スペック表に記載できない素晴らしさがある。ほんとうに撮るテンションが上がるカメラだ。軍艦部には視認性の高いステータスを見るためのモニターがあり、いちいち背面モニターを確認する必要がない。ボディーは防塵・防滴性能を備え得ているため、雨などの悪天候にも対応できる。-10℃まで動作保証をする耐低温設計ということもあり、冬期での極寒なシチュエーションでも耐えることができるだろう。

軍艦部には大きなステータスモニターがある。非常に見やすいので、撮影に集中できる

色表現としては「ニュートラル」で自然な色合いだ。ニコンらしい色づくりで好感が持てる

Z 8はボディー内5軸手ブレ補正機構を搭載。最大約6段の手ブレ補正機能が期待できる。低速シャッターでの手持ち撮影が可能で、夜間時の撮影や、超望遠レンズでの撮影に威力を発揮するだろう。Z 8は高感度耐性も非常に高い。それは気軽に撮れるシーンが増えたことを意味する。「機会が多い」ということは、その分シャッターチャンスが豊富になるので、作品撮りなどにも率先して使えるカメラだ。下記の写真は真っ暗だったので、最大ISO9000まで上げて撮影。ノイズ感を感じさせない画像エンジンの処理が素晴らしい。

■Nikon Z 8 + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S・1/30秒・f2.8・ISO5600

■Nikon Z 8 + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S・1/50秒・f2.8・ISO9000

ポートレート撮影に最適な機能が備わる

今回のようなポートレート撮影にもってこいなのが、「被写体検出AF」だ。人物、動物、乗り物の計9種類の被写体を自動で検知。AFを合わせ続けてくれる機能だ。ポートレート撮影の際には設定にて「人物」を選択。フレーム内のモデルの顔にピントを合わせ続けてくれた。非常に検知率が高く、さらに補足のスピードも高い。AFはカメラ任せにして、後は構図などに集中できる環境が簡単に手に入るのはうれしい。老眼気味の筆者にとっては、この機能の恩恵は非常に大きい(笑)。 また面白い機能として「美肌効果」という機能が新たに追加された。これは、撮影時に自動で肌質を検知し、ニキビや毛穴を目立たせなくするという機能だ。実際にその機能をONにして撮影してみたりしたが、思ったよりも自然な雰囲気のまま補正してくれるため、実用性は高い印象を受けた。ただ状況によっては、「やりました」感は若干あるため、好みが分かれるところだろう。

■Nikon Z 8 + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S・1/800秒・f2.8・ISO100・美肌効果ON

■Nikon Z 8 + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S・1/80秒・f2.8・ISO100

視認性の高いEVFは創作意欲を高めてくれる

約369万画素の電子ビューファインダーの視認性は抜群で、特に拡大表示しなくてもピント面がわかりやすいほどだ。残像や遅延などもなく、「自然に見える」と言ってもいいだろう。Z 6もそうだったが、こういうところをしっかりと煮詰めてくるところが「カメラメーカー」なのだと感じる。そうなるとマニュアル操作で往年のオールドレンズなどを試したくなる。筆者のようにカメラはファインダーを覗いて撮影したい人にも不満は少ない。さらに輝度に関しても丁度よく、長時間覗いていても疲れにくい。

■Nikon Z 8 + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S・1/100秒・f4.5・ISO640

ここだけなんとかしてほしい点がある

唯一、このカメラの残念だったところは「電子シャッター」の音がチープに感じることだ。Z 8に関して電子シャッターのみを採用したことに少し疑問を感じていた。メカシャッターが搭載されて続けたことには意味が当然あるし、実際に電子シャッターでは撮れないシーンなども出てくる。

しかし、実際に使ってみると、Z 8の電子シャッターは優秀で、ローリングシャッター現象も微細な物で問題になるだろうシーンはほとんどなかった。特にポートレートやスナップ、風景などの分野では気にならない。鉄道やモータースポーツシーンなどでは被写体が高速で移動するものであれば、若干違和感を感じるかもしれない。 筆者的には電子シャッターの完成度に引っかかったのではない。シャッター電子音をもう少し「パッション」を高めていける音にしてほしかった。モデルには「スマホで撮ってるような音ですね」と言われる始末……。60万円前後もするカメラなので、そこは正直なんとかしてほしかった。まるでメカシャッターを切っているような「音」を是非追加してほしい。

文・撮影/大貝篤史 モデル/ドヨン

■製品情報Webサイト■
Nikon Z 8 https://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z_8/