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FUJIFILM X-T5 SHOOTING REPORT

約6分
XT5で撮影された写真でモデルは富澤絢愛

カメラは写真を撮るものなのだと理解させてくれる

FUJIFILM X-T5 + XF23mmF1.4 R LM WR・クラシックネガ

富士フイルムXシリーズのフラッグシップモデルであるX-Tシリーズの久々の新モデルが発売された。X-T4が2020年6月発売であり、それから約2年半の時が経った。富士フイルムは様々なラインアップを展開しているが、著者はこのX-Tシリーズが一番好んで使用している。もっともハイスペックなスチルカメラらしいフォルムとその性能に惚れ込み、いつでもその時代のトレンドをきちんと組み込んでくる。それこそがフラッグシップモデルの「宿命」であり、だからこそフラッグシップモデルなのだ。

今回発売されたX-T5に関しても大事にしたのが「写真機」としてのあり方。スチルカメラとしての使いやすさや必要な機能アップデートを行った。センサーに関しては約4020万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用。画像処理のアルゴリズムを改善することで、さらなる解像感を実現している。ISO感度に関しても常用で125になり、従来モデルの160よりもより低感度での撮影が可能。富士フイルムのXFシリーズの単焦点レンズは開放値がかなり明るめのレンズが多く、日中でも積極的に使用できる環境がより整った。ISO160になったX-T4でもポートレートシーンなどでは「ありがたい」と感じた。メカニカルシャッターで撮影できるチャンスが増え、動きの早いシーンでも躊躇なく使用でき、表現の幅が広がる。

FUJIFILM X-T5 + XF35mmF1.4 R・クラシックネガ(上)
FUJIFILM X-T5 + XF30mmF2.8 R LM WR Macro・クラシックネガ(下)

ボディーサイズに関しても体積量としてはX-T4よりも少なくなり、よりX-T1のボディーサイズに近づいた。X-T4の最大の弱点だったX-T3よりもかなり厚みが出てしまったサイズ感はかなり打ち消された印象だ。重量に関しても約557グラムと軽量。長時間の撮影でも握り続けられる重量感だ。バッテリーに関してはX-T4と同様のものが使えるので、バッテリー資産もそのまま継承できる。もともと使いやすいと感じていた軍艦部のダイヤル類は健在。ミラーレス化においてもっとも弊害になったと思われる物理ボタンやダイヤル減少というカメラ界の流れに反し、写真機としての使い勝手を優先したデザインには脱帽だ。いいものは無理に変えず、悪いところだけ改良する……。それがX-Tシリーズの真髄だ。だからこそ、進化ではなく深化なのだろう。

FUJIFILM X-T5 + XF35mmF1.4 R・クラシックネガ(上下)

このボディーサイズながらもボディー内5軸手ブレ補正機構を搭載。最大で7段の補正効果のおかげで、遅いシャッタースピードでもブレの少ない撮影ができる。X-T4でも十分に効果を感じられたボディー内手ブレ補正機構だが、さらにX-T5ではその効果を感じられた。

別物と言えるほどのAF性能の向上

FUJIFILM X-T5 + XF23mmF1.4 R LM WR・クラシックネガ

X-T5で非常に進化を感じたのが、AF性能だ。X-T4でも十分に速いと感じたが、それをさらに上回るスピードで合焦する。それだけではなく、精度に関してもとてもよく、ヒット率が高くなったことで「失敗写真」が大幅に減少。撮影時の不安がなくなった。今回のようなポートレート撮影の場合には「顔・瞳認識AF」を使用して撮影したのだが、今までだと認識してくれないシーンなどもあったが、今回はほとんどのケースで認識し、小刻みに動くモデルにもしっかりと追従してくれた。また、人物だけではなく「動物、鳥、車、バイク、飛行機、電車」など多くの動く被写体に対応してくれる。AF-SでもAF-Cのどちらのモードでもワンランク上のAFが楽しめ、撮る意欲が湧いてくる。また、低照度の暗所でもしっかり稼働するので、撮影できる時間帯が広がるのもうれしい。

Xシリーズの十八番「フィルムシミュレーション」も健在

FUJIFILM X-T5 + XF35mmF1.4 R・クラシックネガ

今回の作例もすべてフィルムシミュレーションで撮影し、JPEG撮って出しだ。選択したのは「クラシックネガ」だ。筆者が数年前から独自のプリセットを意地になって作成している。富士フイルムのフィルムシミュレーションは自分なりにカスタムしてボディーに登録しておけるので、シーンや雰囲気に合わせてかんたんに切り替えることができる。まさにフィルムを入れ替えるようなイメージだ。海外のサイトだが世界中の人が色々設定を公開しており、ここから自分好みの設定を探し出すのもいいかもしれない。

「FUJI X WEEKLY」

FUJIFILM X-T5 + XF30mmF2.8 R LM WR Macro・クラシックネガ(左上)
FUJIFILM X-T5 + XF35mmF1.4 R・クラシックネガ(右上・下)

ノスタルジックな雰囲気に仕上げようとすると、他メーカーではアドビのPhotoshop Lightroomなどで現像しなければならないが、富士フイルムのカメラであれば様々なフィルムシミュレーションが用意されており、好みに合わせて選択し、イメージどおりの写真をその場で撮影できる。さらに微調整を行いたい場合には、RAWでの同時保存を行えば、メーカーが用意している現像ソフト「FUJIFILM X RAW Studio」(Win/Mac両対応)を使用することで、PC上ですべてのパラメーターをいじることができる。その際には撮影したボディーをUSB-CでPCとつなぐ必要がある。これもネガティブな行為ではなく、現像処理をカメラ本体のエンジンを使用して行うことで、雰囲気が変わることなく、本来のフィルムシミュレーションの色味を堪能できるのだ。フィルムを長年販売してきたメーカーならではの「色」へのこだわりなのだ。

どんな撮影スタイルにでも活躍できるX-T5

FUJIFILM X-T5 + XF23mmF1.4 R LM WR・クラシックネガ

今回の記事ではスチル撮影を行う上でのメリットや使用感を記事化したが、動画性能に関しても大幅にパワーアップ。6K対応になっていたり、13+stop対応のF-log2が使えたり、SDカードスロットがUHS-Ⅱのダブルスロットになっていたりと、データ容量が大きな動画データにも対応できる環境を手に入れている。AF性能や手ブレ補正機構の向上も動画でのアドバンテージを引き上げてくれるだろう。もっと本格的に動画を撮りたいと思った場合には、X-H2Sという選択もあり、富士フイルムの中で完結できる。ただ著者のイメージではX-T5で十分に事足りると思うのだが……(笑)。

X-T5は写真機としての方向性をしっかりとブレずに示しながらも、+αな使い方をきちんと示してくれるカメラだ。まさに可能性を広げてくれるとはこういうことで、これからの深化が楽しみなシリーズになっている。


文・写真/大貝篤史 モデル/AYAME
■X-T5 https://fujifilm-x.com/ja-jp/products/cameras/x-t5/