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写真の今がわかるWeb情報マガジン

写真の「チカラ」#33 河本花波

約4分

肉眼で見る世界と違うファインダー越しの世界

 写真を始めたのは高校生のときに写真部に入り、カメラを握ったのがきっかけだ。「ちょっと撮ってみたら?」と渡されたカメラで花壇の花々を撮影したりいろいろなものを撮影した。そのときのファインダーを覗いたときに見えた世界に心奪われた。肉眼で見る世界とはまったく違う「情景」が見える。ボケ感のある幻想的な世界……。それは私にとってとても魅力的だったのだ。

 それから、たまたま友人を撮る機会があり、ポートレート撮影の魅力に出合う。そのときの作品で小さな賞をとることができ、少し自信につながった。それからは、ポートレート撮影を中心に作品づくりをしている。人物撮影の魅力は、なんといっても「人と人の関わり合い」だろう。人間である私がカメラを握り、そして被写体もまた人間。ふたりの意識がぶつかれば、そこにはエネルギーが湧き上がる。そのリアルでエネルギッシュな空間に、私はとても心高まるのだ。撮影の際には最初からイメージを描いているが、そのとおりに撮れるほど甘くない……。だからこそ試行錯誤しながら撮影し、偶発的な瞬間が生まれる。その瞬間を自分の表現したい形で撮影できたときには、嬉しくてたまらない。そして、さらに自分の世界に落ちていく……。それこそが「写真」なのだと思う。

モノクロ作品は必然だった

 最近の作品の多くはモノクロ写真だ。写真を始めた頃はカラー撮影がほとんどだったが、性格が影響してなのかモノクロ作品がしっくりくる。「白黒つけたい」性格なので、白と黒のコントラストはまるで私の心の中を表現しているようだ。また、私が好きな写真家の作品もモノクロ写真が多く、その影響を受けている。愛機としてメインで使っているカメラは、ニコンのZ50だ。そのカメラに、尊敬している写真家・舞山秀一さんから頂いた古いニッコールレンズの35mm F1.4を装着している。このレンズで撮影すると、美しい玉ボケと「湿度」を感じる。自分が表現したいポートレートが表現できるレンズだからこそ、もっと使い込みたい。

 マニュアルレンズの楽しさを感じてはいるが、私はフィルムカメラで撮影したことがない……。すでにデジタルカメラが身近にあった世代だからだ。デジタルカメラはとても便利だが、イージーすぎて味気ない。しかし舞山さんからいただいたこのレンズはマニュアルレンズなので、自分でピントを合わせないといけない。AF搭載のレンズを使っていたときと比べると、瞬間的に撮影できず不便にはなったが、写真を撮ることがとても「楽しくなった」。自分で試行錯誤しながら撮影することで、写真一枚一枚の大切さが理解できたし、なによりもカメラに「撮らされている」意識はなく、自分自身の意識で「撮影している」実感が湧いてくる。だからこそフィルムカメラでいつかは撮影してみたい。そこに自分がまたうまくなるヒントがあるように感じる。そして、いつか東京で個展を開きたい。多くの人に自分の作品を見てもらい、共感してほしいのだ。そんな日が近い将来くることを祈りつつ、シャッターを切り続ける。写真は面白い。

■モデル/原 有純、樋口朝香、岡崎 優人


河本花波 こうもと・かなみ

兵庫県生まれ。幼少期から、思うがままに絵を描いていた。高校1年生の頃、何気なく興味をもった写真部に入部したことがきっかけで写真に目覚める。ポートレートを中心に作品を撮り続けている。Nikon TopEyeフォトコンテストにて準TopEye賞受賞。EPSON meetup! -selection-にてプリント部門 グランプリ受賞。公益社団法人 日本写真家協会JPS展2020 東京都知事賞受賞。

​初個展「アオハル展」
ネイルアーティストNARUMIとのコラボ展「Nail art × Photo Exhibition」
EPSON meet up! -selection-の受賞者による作品展「meet up!-EXHIBITION-」

https://komotokanami.com/