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LUMIX G9PROII SHOOTING REPORT

約9分

待ちに待った写真機としての進化

パナソニックのカメラブランド「LUMIX」より久々のミラーレスカメラGシリーズの新モデルLUMIX G9PROIIが発表された。初代は2018年発売なので約5年の歳月を経ての新モデルになる。LUMIX G9PRO同様にコンセプトは「写真機としてのフラッグシップモデル」で、映像系にも強いLUMIX GHシリーズとは少し位置づけが異なる。「生命力・生命美」をテーマに被写体の生命力を表現かつ感じられるようなリアルな色表現を目指したモデルだ。なので、スチル撮影を強く意識したモデルは当初から話題になった。LUMIX G9PROIIは、そのコンセプトを正統に引き継ぎ、基礎体力を大幅にアップさせて登場。その魅力はより際立っている。

LUMIX G9PROII + LEICA DG VARIO-ELMARIT 35-100mm / F2.8 / POWER O.I.S.・1/160秒・f8・ISO100

LUMIX G9PROII + LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 ASPH. II / POWER O.I.S.・1/80秒・f6.3・ISO100

一新されたAF性能が写真のクオリテイーを上げる

まず、LUMIX Gシリーズとしては初となる像面位相差AFが追加された新AFシステムも搭載。スチル撮影では空間認識AFでも十分だと感じていたが、像面位相差AFが搭載されたことで、コントラストが浅い被写体でも迷うことなく合焦する。夜間や暗所での撮影ではその恩恵はさらに感じる事ができるだろう。LUMIX G9PROだと、AFが合わないときは、とことん合わない(笑)ことが多い印象だったがLUMIX G9PROIIに関しては、全体的なヒット率が上がり、非常にいいスコアだ。

実際にはもっと真っ暗だったので、このようなシーンでは被写体に合いづらいのだが、LUMIX G9PROIIならかなりヒット率で合う
LUMIX G9PROII + LEICA DG SUMMILUX 25mm/F1.4 II ASPH.・1/50秒・f1.4・ISO3200

さらに合焦速度も改善され、非常に小気味なAF速度だ。ポートレート撮影時においては、従来からある「人体認識AF」を使用して撮影しているが、AIのディープラーニングが進み、より的確な被写体検出が可能になった。従来だと「人物」としてなかなか認識できなかったり、AF-C時における小刻みな揺れが目立ち、合焦しているのか不安なシーンがあったが、LUMIX G9PROIIではそのような現象はそれほど見られなかった。撮影時の快適性は格段にアップしている。さらに今回は、検出できる被写体が増え、「人体瞳、車、バイク、動物瞳」が追加(LUMIX G9PRO比)。このあたりは、他メーカーの検出種類が増えていることに対抗するための措置だろう。

動き回るモデルを人体認識AFで撮影したが、回ったり走ったりする動きにもしっかりと対応していた
LUMIX G9PROII + LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH.・1/200秒・f8・ISO100

窓越しからの撮影だったが、人体をしっかりと認識。手前のガラスに合うことなくモデルにピントを合わせ続けた
LUMIX G9PROII + LEICA DG SUMMILUX 25mm/F1.4 II ASPH.・1/500秒・f1.4・ISO100

より熟成された色表現の方向性

色表現に関してはかなりの進化を感じた。フルサイズミレーレスカメラであるSシリーズを含めた今までのLUMIXシリーズの中でも「最高品質」なのではないかと思わせるほどの出来栄えだ。色彩の階調感が高く、マイクロフォーサーズセンサーであることを忘れてしまうほどの立体感はAPS-Cサイズのカメラと比べても遜色をそれほど感じない。さらに色深度に関しても非常に豊かなため、同じ色でも細かい色彩変化をしっかりと捉え、その違いを忠実に描いている印象だ。色思想もやや赤みの強いLUMIX S5IIとは違い、より「忠実色」に戻っている。これはありがたいことで、マゼンタ被りの写真よりも色味のコントロールがしやすい。まさに「写真を撮るためのカメラの追及」がなされているのだろう。

LUMIX G9PROII + LEICA DG SUMMILUX 25mm/F1.4 II ASPH.・1/8000秒・f1.4・ISO100

LUMIX G9PROII + LEICA DG VARIO-ELMARIT 35-100mm / F2.8 / POWER O.I.S.・1/400秒・f2.8・ISO100

ポートレート撮影時においてもその恩恵は感じられ、人肌(スキントーン)の描き方が絶妙にいい。筆者はポートレート撮影をメインに行っているが、このカメラならJPEG撮って出しでも十分に自分の「理想」に近い。健康的な肌の再現、そこに加わる透明感……。その両立がしっかりと実現している。もちろん、緑が非常に生き生きとしているので、風景やスナップなどで十分にその性能を発揮できるだろう。またダイナミックレンジブーストが搭載されたことで、白トビや黒つぶれにおける階調感が大幅に上がった。このことで、RAWデータ時の現像で暗部をおこしたときのディテール潰れが大幅に改善され、いわゆる「失敗写真」を減らすことができる。マイクロフォーサーズセンサーとは思えない色彩の広がりをぜひ感じてほしい。

LUMIX G9PROII + LEICA DG NOCTICRON 42.5mm/F1.2 ASPH./POWER O.I.S.・1/2500秒・f1.2・ISO100

LUMIX G9PROII + LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 ASPH. II / POWER O.I.S.・1/100秒・f5.7・ISO100

感度関連の進化がすごい。まさに写真機としての需要を捉えた

また高感度耐性に関しても従来モデルに比べて大幅にアップ。かなり高い感度まで上げても、ディテールが残った写真がしっかりと撮れる。さらにノイズ処理に関しても非常によくできており、気になるノイズを感じさせない写真が撮影できる。このあたりは新しい画像処理エンジン「ヴィーナスエンジン」の性能だろう。 センサーに関しては新開発Live MOSセンサーを搭載。有効画素数約2500万画素のセンサーなので、プロユースでも十分に対応できる画素数だ。さらにLUMIX G9PROは最低感度がISO200(常用感度)だったのに対し、LUMIX G9PROIIはISO100(常用感度)が可能になった。これはスチル撮影時には重要で、野外撮影が多いプロおよびアマにとっては低感度の充実は重要なポイントだ。LUMIX Gシリーズのレンズには明るい単焦点レンズが多く、開放値で使いたくても屋外でISO200が厳しいシーンもあった。LUMIX G9PROIIはそんなシーンでも十分に開放値から使用できる。「細かい」変更点ではあるが、こういう「痒いところに手が届く」変更こそ基礎体力が上がったと感じさせる要素なのだ。

LUMIX G9PROII + LEICA DG NOCTICRON 42.5mm/F1.2 ASPH./POWER O.I.S.・1/4000秒・f1.2・ISO100

LUMIX G9PROII + LEICA DG SUMMILUX 25mm/F1.4 II ASPH.・1/40秒・f1.4・ISO3200

強力な手ぶれ補正機能は写真の可能性を広げる

今や必須とも言える機能として手ブレ補正機能がある。LUMIX G9PROIIはボディー内5軸手ブレ補正機構が搭載されており、最大で約8段分のブレを抑えてくれる。この恩恵は低速シャッターシーンでは絶大な恩恵があり、1/10秒以下になってしまうシーンでも被写体ブレがない限り、ブレが抑制された写真を撮ることができる。また、明るいシーンでもブレやすい超望遠レンズを使用する場合でも、これだけ強い手ブレ補正機能があれば、臆することなく「振り回す」ことが可能だ。

LUMIX G9PROII + LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 ASPH. II / POWER O.I.S.・1/30秒・f8・ISO100

スペック表には出ないカメラとしての完成度の高さ

ボディーデザインに関してはLUMIX S5IIと同系統のデザインに統一。よりユーザビリティを優先させたデザインとなった。筆者個人的な思いとしてはカメラらしいLUMIX G9PROのデザインがとても好きだったので、そのまま採用してほしかった。ただ筆者のようにLUMIX S5IIをすでに所有している場合には、使い勝手がほぼ同じなので、なんの違和感もなく使えるのはいい。ボタンの配置や押し心地まで(笑)一緒なのだ。背面にあるジョイスティックも4方向から8方向に変更されており、これに関しては非常に扱いやすくなった。自動認識AFばかり使っているわけではなく、意図的にAFを決めたいときは8方向に動くようになったジョイスティックのおかげでねらったところにAFポイントを素早く移動できる。軍艦部のボタンも伝統の配置で指がすっと持っていける。

LUMIX G9PROII + LEICA DG VARIO-ELMARIT 35-100mm / F2.8 / POWER O.I.S.・1/400秒・f2.8・ISO100

またマイクロフォーサーズモデルらしく、「小型かつ軽量」なのもいい。筐体はLUMIX S5IIと同様だが、重量に関しては約80g軽い。さらにLUMIX Gシリーズ用のレンズは小型かつ軽量なものが多いので、「カメラシステム」として見た場合には、さらにその重量差は顕著だ。小型かつ軽量であれば、その分を足を運びやすくなり、撮影チャンスが増える。そうなれば作品をクオリティーも自ずと上がる。この「正の連鎖」が自分の納得いく写真を撮る近道になる。LUMIX G9PROIIはまさに近道の「道しるべ」のようなカメラなのだ。

「センサーは大きいほど正義」という風潮が出来上がって約5年。確かにセンサーサイズが大きいことでの恩恵はある。しかし、小さいから駄目なのか……。それは違う。どのカメラ、どのセンサーサイズにもそれぞれの魅力があり、それを自分の撮影スタイルを考察して、最適なカメラを選ぶ「力」が必要だ。「それは詭弁だ」と思う人は、ぜひLUMIX G9PROIIを触ってほしい。その時に「あれ?」と思った人にはLUMIX G9PROIIをおすすめしたい(笑)。

文・撮影/大貝篤史 モデル/may、ドヨン 撮影協力/BMW M Team Studie

■製品サイト LUMIX G9PROII
https://panasonic.jp/dc/products/g_series/g9m2.html

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