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写真の「チカラ」#06  田村 弥

約3分

レースという「生き物」を撮る

サーキットを駆け抜けるレーシングカーはあこがれだった。それが今では仕事として関われている。これはきっと必然だったのだろう。
小さいときからクルマがとても好きだったので、クルマの写真は幼少時でも撮っていた。高校生の時に友人とレースを見にサーキットへ足を運んだ時に衝撃を受ける。すごい世界だと漠然とだが感じた。そんな貴重な瞬間を写真に収めたいと思い、シャッターを切るがどれも失敗写真ばかり……。その時に心の中から湧いてくる感情は、「このすごい世界をかっこよく撮りたい」という思いだった。それから数年後に僕はレースの世界に入った。そして素晴らしい多くの人に出会うことができ、今に至るのである。
レースというと、最新鋭のレーシングカーがコンマ何秒の世界を最先端の技術を駆使してタイムを競うことだと皆思うだろう。もちろんそれは間違いではない。しかし、その裏には非常に人間臭いドラマが広がっている。レーシングカーを精密に作り上げるのが人、それを走らせるのもドライバーという生身の人間だし、戦略を組み立てるのは監督というやはり「人」なのだ。だからこそレースは面白い。いろいろな人の思惑や感情があふれ出す場所こそサーキットなのだ。僕にとっては「撮り甲斐」のある瞬間が詰まった宝の宝庫だ。
さらにサーキットの面白いところは、不確定要素が多数存在することだ。それは「天候」だ。どんなに最先端な技術をもってしても、天候という自然現象には翻弄されてしまう。そういういろいろな要素が絡み合うことで、レースも撮影する僕も予想外の結末を迎えることがある。うまくいくときもあれば失敗することもある……。けれど、まるで「生きているかのようなこの空間」で写真を撮れる喜びには変わらない。

絶対的な信頼性と耐久性がほしい

レースシーンの撮影においてもっとも重要なカメラの要素は、基本性能の高さと信頼性だ。AFが合うのは当然当たり前。「写る」ことは当然なのだ。それ以外にも耐久性や信頼性がマストな条件だ。上記したように天候の変化やクラッシュなどでの状況変化が突然訪れるので、臨機応変に対応しなかればいけないことが多々ある。そういうときにバランスのいいカメラはフットワークを高めてくれる。レーシングカーがレースに勝つように造られているように、僕は「勝てるカメラ」を選びたい。だからこそ機材選びには慎重だし、機材のコンディションにも注意を払っている。
2020年は新しいことにチャレンジしたい。少しマンネリ化した自分の「殻」のようなものを破りたいのだ。そのためにも、常にチャレンジすることを忘れたくない。


田村 弥  たむら・わたる

1972年生まれ、神奈川県出身。高校時代にモータースポーツに興味を持ち、
サーキットに通いレース撮影を始める。
写真家、小林稔氏に師事。その後フリーランスとなり、自動車専門誌を中心に活動中。
レースは勿論、新車から旧車、チューニングカーまでなんでも興味津々のクルマ好きで、暇があると、早朝のワインディングに出没する走り好きでもある。